毎日22時に日記を書く
「今日も楽しかった、明日もいい日になるだろう」
ただ、それだけを書く
昨日の日記を見てみる
「今日も楽しかった、明日もいい日になるだろう」
そのまたずっと前の日の日記を見る
「今日も楽しかった、明日もいい日になるだろう」
そんなこんなで、明日の日記のことについて考える
明日は何を書こうか、毎日21時から考える
そして、筆をとってその日の思い出を振り返る
心の中にあるのは、ただ何もなかった1日
朝起きて食べ物を食べて、たった1行の文字を繰り返し読み続ける
そして、日記を書いて寝る
そんな毎日を繰り返し、そして想い続ける
明日もいい日になるだろうと
明日はいい日になるだろうと
そしてまた朝、目を覚ます
誰に言うこともない、おはようという挨拶と
何の味もしない塊を口に含む
そして、ずっと前の日記を読んで今日を振り返り続ける
さぁ、今日も日記を書こう
今日はどんな1日だったんだろう
ふわふわと浮いているような、上に昇っているような
そんな感覚がずっと続いている
こんな状態になっていても
何年経ったかなんて気にしたことがない
この穴に落ちてから私はとても幸せ
だって深い深い穴に落ちているだけなのだから
「いつかは会えるかな?」
それは私にとって唯一の欲望
だってみんなは私より先にこの穴に落ちていったのだから
「あの時の私はバカだったなぁ 」
落ちる前の私はこの穴を怖がってあっちへこっちへ行ったり来たり
そんな馬鹿らしいことを続けていた
でも今の私はなんて幸せなんだろう
昨日も明日もない落ち続けるその時間がなんと幸せなことか
そんなことを考えてたら手足の感覚が無くなってきた
でも苦しくはない、感じるのは心地良さだけ
じわじわと全身の感覚が無くなっていく
いや、この感じはこの穴と混ざっているのか
そうだ、なら最後になにか叫んでやろうじゃあないか
そんなくだらないことを思いついてしまった
大きく息を吸い、ずっと思っていたことを吐き出す
「ああ!こんなことなら早く━━━━━」
言いかけて私は意識を失った。
僕がいるあの世界
誰もいない街で自由に歩き、雲ひとつない青空を見る
邪魔なものなんてひとつもなくて、僕は自由だった
僕がいるあの世界
大好きだったあの子を抱きしめる
一緒にただ時間を感じる、懐かしくも悲しい世界
僕がいるあの世界
友達と笑い合い、くだらない話を延々とするのだ
今では覚えていないけど、楽しかったあの思い出を
僕がいるあの世界
真っ暗で何も見えない、感じない
でも何も考えなくて済む気楽な世界
僕は自由で才能に溢れ、常に笑顔だった
そんな僕を追い求めながら目を覚ます
走ることが出来なくても幸せな僕はどこにもいない
不自由で才能のない僕はこの世界でただ走り続けるのだ
心地よかったあの感覚思い出したようで思い出せない
何度か通った小さなあの店
何となく気に入っていたあの窓辺の席
店員たちの優しい声
自分が座っていたあの感覚、注文する時のあの感覚
聞こえてきた音楽は何の曲だったんだろ
最後に行った日すら覚えてないけど、でも記憶の片隅にぽつんとある
今はもうないあのお店
小さい頃の僕、あの時僕は事故で死んでいたかもしれない
死んだ後の世界はどうだったんだろう
親はお父さんお母さんはどんな気持ちになったんだろう
どういう年の取り方をしてたんだろう
お友達のみんなは僕に合わないことでどんな変化を起こしたんだろう
お父さん、お母さんはなんか仲が悪くなってそうだな
友達はなんか今と変わらずにいそう
でも、僕がいないって思うとちょっとは何か変わってたかも
もしくは僕がいない世界では、世界が崩壊していたかも
そんなわけないよ、だって今僕は何も変えられてないんだから
ちっぽけな影響しか持たないけど、世界は変わっている
今の世界は僕がいるから、今になっている
あの日から生き続けている僕のちっぽけな妄想