目の前に並ぶ仲間達の目を一通り見て、わたしは息を吸う。
「長い……永い、戦いだった。
みんな、ありがとう……」
仲間達はそれぞれ、喜んだり、泣いたり、笑ったり、安堵、感慨、万感、感無量――今まで抱えてきた分だけの、表情を浮かべていた。
そう、この表情。心の枷が砕かれて、解き放たれる様、これが――、これだけが、あればわたしは――。
「……本当に、ありがとう」
わたしの足先から、透けてゆく。ああ、時が来てしまった。
役目を無事終えたわたしは消えるのだ、だって、わたしは――。
気付いた仲間の一人が声をあげる。動揺は波及し、全員から驚きと嘆きの声が投げかけられる。
"ごめんなさい"、言葉にできない謝罪を心の中で唱えて、笑みを浮かべる。
どうか、どうか笑っていてくれ。それだけがあれば、わたしは——、さみしくない。
みんなとの思い出と、笑顔とを、心の中に満たして。
「さようなら。」
———————
何もいらない
一体いつまで、生きることを頑張らなきゃいけないんだろう——
——そう思いつつも、その答えはとっくに理解している、分かりきっている。
——————————
これからも、ずっと
「『久しぶりだね。いくらか、やつれたんじゃあないか?』」
「『はは、隈も濃くなってる。ちゃんと寝ているのかい?』」
「『全く、なんて酷い顔をしているんだ』」
「『君、は、』……」
鏡に映った君は、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
———————————
君の目をみつめると
晴天の日、太陽は眠りに就き、代わりに巨大な鏡が金色の薄明りを齎す。
そこに無数の光の砂粒が、大小様々な絵画を描く。
……それをじっくり鑑賞していれば、聞きなれた声。
「今夜も見ているのか」
やはり見知った人だった。
「もちろん」
「よく飽きないな」
「飽きるはずもないよ」
「そうかい」
そいつは傍まで歩いて来て、言葉を続けた。
「やはり宙には行かないのか」
「行かないね」
「今きみが見ているものが、もっと近くで見られるんだぞ」
「そうだね」
「・・・・・・あの人だって、見つけられるかもしれない」
はた、と。気付き。
確かに、宙にいるあの人を——あの砂粒達の、どこかにいる筈の——
——ああ、けど、やはり。
「いや、いい」
「何故?」
単純な事。
「わたしは、ここから見る景色が好きなんだ」
——————
星空の下で
社会の喧騒から離れた、自然豊かな地。
そこにひっそりと佇む、冷たい石塔。
恩師の眠る場所。
静かなそれへ、わたしは祈りを捧げた。
もう、この人がいなくなってから幾許か……必死に日々を過ごし、生き延び、気が付けばこんなに時間が経ってしまっていた。
あなたの導きを受けなくなってから、それ程の時間が経っている——
「——わたしはまだ、まっすぐ歩けているだろうか」
そよ風が、わたしの頭を撫でて行った。
仄かに暖かかった気がした。
——————
それでいい