何をしてもダメで
取り柄なんてなくて
可愛げもないし
性格悪いの分かってる。
みんなに好かれないのも
自分を好きになれないのも
どうしようもないことなんだって
いつしか諦めてた。
でも、
それでも君だけは、
側に居続けてくれた。
だから私は
いつまでたっても
曖昧に
この人生を繋いでしまうの。
カランカラン
「県大会行けますよーに!!」
「彼氏できますように!!」
「ねぇそれはさーww」
カランカラン
「健康に過ごせますように。」
カランカラン
「…今年こそ、認められますように。」
多種多様、十人十色、様々な願い事がある。
彼ら彼女らが切に願っていても、僕らはその欲
望を叶えることはできない。
運命とは、そういうものだから。
干渉せずに見守るのが掟。
カランカラン
「受験、受かりますように…!」
ここに来て何を言っても未来は変わらないとい
うのに、どうして欲望を口にするのだろう。
カランカラン
「あの人が、私を、好きになってくれますよう
に…。」
まぁ、ただ、欲望の幅には驚かされる。
よくもそんなに思いつくものだ。
まったく、人間は面白い。
これだから僕は、仕方ないとため息をつきながら、彼ら彼女らに、多少の加護を与えてしまうのだろう。
窮屈なこの身分も、悪くはない。
たまには僕も、その欲望とやらを口に出してみようか。
「あの子達にどうか、幸せな未来がありますよう…」
たまにはこういうのも良いかなって思う。
計画なんて何もないまま電車に乗って、知らない駅でおりる。
自宅からだいぶ離れた場所。
いかにも田舎、というようなそこの景色は、人生への焦りを緩和させてくれた。
都会ではみんな下を向いてあるいていて、人に合わせてせかせかと足を動かす。
ここではそんなこと気にしなくても良い。
自分のペースでゆっくり歩いて、普段は気がつかないような野花に足を止める。
その度に隣で歩く君はクスクスと笑って、私の手を引く。
ああ、こんな何気ない日常が。
いつまでも続いてくれたらいいのに、と。
君と笑いあいながら願った。
「ねぇほんと無理かっこいい尊いって…」
ペンライト持って、推しの無観客ライブのアーカイブを見る。
「こっちだけ見てくれればいいのに…なんてね。」
限界オタク?そんなの分かってる。
ガチ恋だって同担拒否だっていいじゃん。
好きなのには変わりないんだからさ。
「あ待って今のとこちょーかっこよかった!」
全てがキラキラして見える。
人生変わる瞬間が君なの。
本当は会って話したいけど…今のご時世、少し難しいよね。
だから、こうやって応援してるよ。
辛いことも苦しいことも全部忘れて、現実逃避して、君のためにペンラを振るね。
「手を振るのはズルいってぇ!!!」
キャーキャー言いながら推しを眺めていると、部屋のドアが開いた。
「あんた宿題やったのー?」
あーもーさいあく。
学校のこと思い出させないでよー。
現実逃避してたのにさ。
目が合う、惹かれ合う、通じ合う。
突き放す、浸る、塞ぎ込む。
そうやって私は生きてきて、けっきょく、一人になってしまった。
ねぇ、未来の私。
…あなたは今、幸せですか?
好きなことはありますか。
趣味はありますか。
夢はありますか。
努力、してますか。
……生きるの、辛くないんですか。
ああ別に、死にたい訳じゃないんです。
ただ、自分の生に価値を見出だせないだけで。
いや、自分が不幸だとは、思ったことがないんです。
あなたも分かるでしょ、私なんだから。
母さんも父さんも元気にしてます?
まぁ、興味はないんですけれど。
薄情だって?
数年前までは、あなたも同じだったくせに。
話し合えば分かるって…。
それは、今のあなただから言えることであって、私には出来ないことですから。
大丈夫です、未来の私が生きていることは分かったので。
とりあえず、あなたの見えている世界に行くためにも、生きてみますね。
あなたという価値が、多分、私をそこまで連れていってくれると思うので。
頑張って…ふふ、そんなこと久しぶりに言われました。
なるほど、良い言葉ですね。
言う人によるんでしょうけど。
まぁ、頑張りますね。
…あなたも、今を満喫してくださいね。
次会ったとき、同じ質問しますから。
それじゃあ、また。