『優しくしないで』
そう言われたのは、僕が中学に入学した時。
僕の隣の席になった子は、少し厳しいものの、理不尽ではなく、正論であった。
信頼できる人だと思った。
僕は入学して以来、『優しい僕』を演じていた。
だって、優しいことしか取り柄がないから。
物を譲ったり、提出物を纏めて出すのが、いつからか普通になっていた。
小学生の頃から、『人には優しく』と何度も言われてきた。
自分を押し殺してでも、そうした。
そんなちっぽけな僕がいじめられるのは、何ら不思議では無かった。
ある時はお金。
ある時は暴行・暴言。
お金は持ってくることが禁止されているため、持っていく訳にはいかない。
それに大事な貯金だ。だったら援助交際でもしてろ、下衆。
…と、少し口が荒くなったが、実際その方がいい。お互いに。
それで向こうが勝手に撃沈していけばいい。
暴行はまあ、抵抗するだけ無駄として。
暴言は、語彙力が非ッ常に低レベルだ。
馬鹿とかカスとかゴミとか、本当それくらい。
どっちなんでしょうね、馬鹿でカスでゴミな人は?
…で、いつも心がけているのは『無反応』。
反応を楽しんでる野郎は勝手に消える。
でも、これは根本的解決には至らないだろう。
どうせ他の奴が犠牲になる。
もう少しきつい物がないだろうか…?
それに、やってる奴は対して強くない。
争いは同レベルでしか起きないと聞いたが、本当にそうだと思う。
なんなら、自分より弱そうな奴を探している訳だ。
本当に強いなら、自分よりでかい存在と戦えばいい。
『俺つえー!!』アピールは二次元の話にしろ。
で、本日も放課後、無事にいじめられてた訳なのだが。
そこに、隣の席の子がやってきた。
『てめえら、何してんの?』
非常に低い声でした。ええ。
面倒事を避けたい奴らは速攻で逃げた。どっちが弱者なんだか。
それで事情聴取されまして。『ふーん…。』って感じだったけど。
ちなみに僕が『優しい僕』を演じていたのは、入学式の時からバレていたようで、
『優しくしないで。あんたには優しい以外の取り柄があんでしょ。』
と言われました。本当の僕を肯定してくれた、唯一の人。
証拠も準備万端。
さて、どっちが強いか、白黒つけようか。
『優しくしないで』
世界はどこもかしこも色がある。
目が痛くなるので、目を瞑る。
暗くても、色が確かにそこにあることがわかる。
色が消えたらどうなる?
何色か認知することさえ難しいと思っている。
でも、心にしみた色は消えないと思っている。
そんな僕は、みんなどこかしら違った色でいいと思っている。
『カラフル』
風に乗って、どこまでも。
遠く、遠くへと。
空を、飛ぶように。
どこまでも。
『風に乗って』
刹那。
それは、極めて短い時間を指す言葉。
自分は、仮に『刹那的な生き方』と言われても、『刹那主義な人』でもいい。
ただ、今この瞬間を充実させたい。
友達が、僕に言った言葉。
友達と話す時間も束の間、
彼は刹那、用事を思い出したと言って家に帰ってしまった。
『刹那』
昔、こんな話を聞いた。
『流れ星に願い事をすると、願いが叶う』
どこから出た噂かは知らない。
半信半疑……いや、零信十疑といったところか。
そもそも、流れ星なんて見たことない。
……そんな自分が見ていた空にいきなり現れたあの堕ちていく物は、まさか……
流れ星?
…………願い事をすれば叶う、ね。結局は自分の行動次第。
まあ、一応……願おうかな?
____御願い。自分のこの想い、どうにかして。
『流れ星に願いを』