むにゃ子

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12/6/2023, 9:50:15 AM

眠ってはいられなかった
すべての夜を見たかった
夜のすべてを知りたかった

星祭りのざわめき 青く広がる桜
幻想を探して回った

月光集める居城 大きく積んだチップ
日没と引き換えに瞳が揺れた

雪に埋もれた石畳 車窓に溜まる灯
旅に出る資格ならあった

12/2/2023, 12:12:47 PM

あと10メートルも歩けば出口だね。
そんなに強く首を絞めないでくれよ。君がひどい姿で一人このトンネルに閉じ込められているのは不憫だけど、だからって僕まで死のうとは思わない。君のことは本当に本当に愛してたけど、僕の人生は君だけじゃないんだ。でも、新しい恋人を作る気はないから安心してね。
それじゃあ来週も会いに来るよ。

11/2/2023, 12:24:48 PM

「ハロウィンも終わったことだし、死者は大人しく墓に戻るとしますか」
「もう行くのか? もうちょっとゆっくりしてけよ」
「そうしたいのは山々なんだけどねえ、僕みたいな体腐ってる奴ずっといたらヤバいでしょ。アーシャが来たときとかムード台無しじゃん。実は自分でも結構臭うんだよね」
「は? お前なんでアーシャのこと知ってんの? この時期しかいねえくせに」
「テオが言ってた」
「アイツ!」
「相変わらずおしゃべりだよね」
「…本当にもう帰るんだな」
「うん。名残惜しいけど」
「そのうち祈りに行くさ」
「まあ、あんま気遣わなくていいよ。母さんたちも来るだろうし」
「いや幼馴染みなんだから花ぐらい供えさせてくれよ」
「じゃああの白いやつがいいな」
「ユリか?」
「ああそれ。じゃあね。ありがとう」
「ああ。また来年」

11/2/2023, 9:48:05 AM

もうすぐ私たちの世界は永遠の眠りにつく。
パパととママともペロとも、タロウくんともハナコちゃんとも、パン屋さんともお花屋さんとも、ずっとお別れ。差し金と一緒に体が動いて、私は観客に手を振った。幕が閉じていく。

10/31/2023, 12:51:52 PM

「喫茶『理想郷』へようこそ! 始めてのお客様ですね。まずは当店の注意事項をいくつかご説明させていただきます…」

友達おすすめの喫茶店に来てみた。さっき席に案内してくれたのは店長だろうか。快活そうな方だった。さて、何を頼もう。ホットケーキか。そういえば最近食べてないな…。よし、ホットケーキにしよう。

運ばれてきたホットケーキは、期待していた以上の味だった。僕好みの、分厚くてふわふわした食感。シンプルだけどすごくおいしい。まさに幸せの味だ。周りの客も、皆うっとりとした顔をしている。こんな素敵な店があったとは知らなかった。教えてくれた友達に感謝しなければ。

最近は毎日、『理想郷』で食事をしている。店長の料理の虜になってしまったのだ。本当にこの店にいるときは幸せになれる。常連仲間もできた。みんな似た者同士だからなのか、とても気が合う。こんなに最高のメンバーが集まるのも、店長の陽気な性格と絶品料理があってのことに違いない。名前の通り理想の喫茶店だ。絶対また明日も来「そこのお兄さん、ちょっとよろしいでしょうか」

2週間後、『理想郷』の店主は警察に身柄を拘束された。猫人種の客に提供するメニューに、マタタビを混入していたことが明らかになったためである。店を出て帰宅途中の客が偶然職務質問を受けたことから発覚したのだ。近年は技術の進歩により、誰でも安く医療用マタタビを手に入れることができるようになった。確かに、マタタビを利用すれば少ないコストで大きな集客効果が見込めるだろう。しかし、本来の目的以外で乱用されることは絶対にあってはならない。私たち獣人の社会では様々な種族が支え合って生きているのだ。何事においても秩序は守られるべきである。

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