黄色い丸についた口。
その口が口角を上げたスマイルなんてマークが一時期流行った。
私はあまり好きでなかった。
どうにも、なにかを強制されてるようで居心地が悪い。それだけならいいがクラスメイトが揃ってつけてる時期もあって苦手意識はました。
嫌悪感丸出しにしようと、いつのまにか、社会からスマイルを強制される。
笑顔、笑い顔。
スマイル。
のっぺりして見える。
スマイル
思い切って筆を取った時は何度もあった。
書き出しはその時その時で違えど内容は一緒。
だが途中で断念し何らかの形でそれらは破棄している。スマホなら削除し、パソコンの場合はゴミ箱も空にした。紙の場合上からペンでぐりぐりと見えなくしてから細切れにして捨てた。もし私の部屋に灰皿とライターがあったらそれも使ってた。
それくらい私は書き残すことを躊躇っていた。
どこにも書けない。
書き出してから、呼吸は勿論、落ち着かないのだ。まるで、後ろに誰かいるような気が、そう、今この時も。
どこにも書けない
時計の針が進んでいないことに気がついた。
よくよく観察すれば動いたかと思えば同じところでかくり、かくりと動くのみ。
電池切れか。
そう裏を確認すれば単一が収まっている。
電池はその都度買い足してるような家だ。単一などあるわけもなく明日の朝まで時計は臨時休業である。
さて買い物をする口実ができた。
いつもならコントロール出来ていた。
ただちょっと。ほんのちょっと、良くないことが重なってしまった。
朝寝坊してしまった。そのせいで朝ごはんを食べ損なった。電車でタバコ臭いひとが近くにいた。イレギュラーでちょっとだけ居残り。
そんなアンラッキーなんていつだってあるはず。
遅くなってしまったが帰れる。トボトボとした足取りは不意に止まる。
悪いことは本当に馬鹿みたいに重なるのだ。
好きな人が学校の先輩と手を繋いでた。
慌てて脇道にそれた。
条件反射のように唇を噛み締める。じわじわと視界がぼやける。
「……私の方が絶対好きなのに」
こんなのは負け惜しみで、好きの大きさなんて測れない。
遂に涙が溢れた。
「絶対私の方が好きなのに……」
溢れた気持ちも涙も預ける先がない。
溢れる気持ち
kiss。
リップにオシャレなロゴが入っている。
かと思えば隣のリップはhoneyなんて入っておりまたまた隣はpuriteなんて入っていた。
今年から高校生だいっちょおしゃれするぞと意気込み手始めにリップとドラックストアに来たは良いが種類の多さでたじろいだ。
はじめはマニュキュアと思っていたが姉に借りて塗ってみれば乾かす時間が長いこと。これは駄目だとリップに鞍替えしたのだ。したのだが。
どれがいい。
思い切って可愛いのと選べば選ぶほど深みにハマっていくのがわかる。
kiss