「クリスマスケーキってよく聞くけどハロウィンケーキって聞かないね」
とはクラスメイトの言葉である。
世はまさにクリスマス一色で赤と緑のコントラストで溢れかえっている。そんななかケーキ屋の前を通った時に足を止めてつぶやいたのが冒頭の発言だった。
「ケーキはなくてもお菓子があるからじゃない?」
「なおのことケーキがあるべきだと思うなー」
そうだろうか。
「……ケーキ、食べて帰る?」
「もちろん!」
クリスマスであろうとなかろうと、ケーキは入り用というわけか。
クリスマスの過ごし方
支度に忙しいのはなにも楽しませる側だけではない。
楽しむ側にもそれなりの準備と品格が必要なのである。
例えばパーティーに出席のためにドレスを新調したり。またはお邪魔にならない、けど相手を喜ばせる手土産を用意したり。
それは身近な人間であればあるほど求められるのだ。
ツリーの下に用意したウエルカムドリンクの温かいミルク。とっておきのクッキー。
この日のために何回も試行錯誤して納得のいくものが出来た。世のパティシエが思わず嫉妬するに違いない。
完璧なお出迎えセット。
イブの夜にこれ以上ない布陣。
あとは寝るだけ。寝たふりをするだけ。
私をいいこと言うなら、クッキーを食べてミルクを飲むところくらい、盗み見をさせて欲しい。
欲しいものはたくさんある。
だけどプレゼントは何がいいと聞かれると困って仕舞う。
欲しいという気持ちはあるが特別欲しいものがないのだ。あったら嬉しい。なくても困らない。いざとなれば買えないこともない。
それでも買ってもらえうならと一番高いものを選んだが後になってやっぱりあれが良かったとなる。
プレゼント。
用意する楽しさの方があったりするからなかなか厄介だ。
キッチンからゆずの香りがした。
コーヒーを淹れるためと部屋を出て正解だったらしい。場合によってはつまめる物を頂戴できる。
部屋を覗き込めば案の定エプロン姿の家族がいた。
しめしめ。
そうゆっくりと近づけばより甘い香りがした。
「なに作ってんの」
するとイタズラする子供を見る様な目である。心外だ。
ゆずの香りを嗅ぎつけた腹ペコと思っているのだ。ここにきたのは全くの偶然だというのに。
空ならすぐ何処にある。
顔さえ上げれば見ることができる。それが空だ。
だが大空というには憚れる。必ず視界の隅に建物やら電柱やらは見えて仕舞う。人間がやったことだ。それも多くの人間が。
だからこのことについてあれこれ言う資格はないのだ。
資格は無いが一度でいいと空に近い場所を目指した。
幸い私でも行ける場所である。
山の上だ。一応初心者でも登れるものを選択した。
選択はしたがやはり初心者。目的の標高につくのに、酷く時間がかかった。
私は感動で息をのんだ。
冬の空はよく見れば水色の向こう側にほんのり藍色が見えるのだ。だから冬にこそ空を見ていた。
山の上の空の藍色はそれ以上に鮮明だった。
もっと高い空から大空を見たい。