あえて水たまりに
突っ込んでいくかのような勢いで
ひたすらに歩き つかんだ日常
その結果はまさに...
ただ繰り返している毎日
歯車だなんて まあよく言ったもんさ
仕事を増やすための仕事
其奴の評価のための仕事
だれも 責任は取っちゃくれないさ
だれも 汚れた靴紐に気づかないさ
食いしばった歯が叫ぶ
「ご機嫌取ったぜ賞与をくれよ」
物憂げな空が 嘲笑う
「ずいぶんちっぽけなことで命を削っているんだな」
全身の血が怒る
「苦しみの先に何があるんだい」
物憂げな空は 唄った
「そんなことより 目の前をみろよ
放電と充電を繰り返しちゃダメさ」
太陽が見計らったかのようにのぞく
「ニセモノの『哲学』しかない奴らに
どうか 負けないでくれ
何に命を削るべきか よく考えるんだ」
朝一の重めの会議 上司の顔色
交通渋滞 降るかも分からぬ雨のための傘
世界じゃ誰もが仮面をつけて 踊ってる
そんなこと気にせず 10分の休み時間で
ボールを蹴飛ばしていた ぼくら
明日に何があろうと コントローラを手にし
家族と ただ目の前のレースを 楽しんでいた
もうそんなことは そんな安心は 存在しない
きっと
僕らがもらった小さな命
か細いけれども なんとか紡いできたわけで
効くかも分からない安めのドリンク飲み干して
朝日がまた来やがったと 思いながら
寝癖を整え 仮面をつけて 玄関をしめる
履き慣れてしまった革靴の踵は すり減っていた
ファンヒーターから漂う灯油の匂いと
毎年聴いていても 飽きることのない
クリスマスソング
(今年もきっと君は来ないし
ラストクリスマス、なんて 言って
去年のクリスマスを思い出す)
イルミネーションが煌めく街に 少し心躍る僕ら
今年は何を贈ろう
オランダをテーマに作り込んだ街に入ると
木々も風車も何もかもが光に照らされていて
少し気の早いサンタクロースたちが
至るところで ポーズを決め込んでいた
◇
お目当てのレモンステーキは分厚くて
オニオンスープが意外と薄味だったのが
また良くて ゆったりとした時間が流れた
◇
ホテルからは海が見えた
少し暗い部屋の中 灯りをつけて
小さいサイズの人生ゲームで争う
約束手形が増えても 苛立たなくなったのは
僕らが大人になったからなのか
◇
朝食は 好きなものをたくさんとって
おかわりまでした
君は小さなケーキを 大切そうに食べていた
◇
雨でも 君はご機嫌で キラキラした街を
真剣に見つめていた
(カメラを見つめる僕とは 大違いだった)
そして お土産を買いすぎる僕たちは
似たもの同士だ
二度寝から目が覚めて 少し気だるい日曜の午後
何か口に入れる必要があるはずさ 重い足を動かす
近くのスーパーにある ちらし寿司でも買おう
◇
外に出ると 空が灰色に染まっている
目を凝らすと 微かに水滴がみえた
雨音はきこえない
だから 傘はいらないだろうと判断して歩き始めた
濡れながら歩いていると
ふと
亡くなった愛犬の小さな歩幅を思い出した
◇
目当てのちらし寿司は売り切れていたし
それなりに服は濡れたけれど
しとしとと降り続ける雨は 嫌いじゃなくて
隣にあった 2割引のカツ丼を手に取った