『記憶』
人は老いと共に記憶を失っていく。
忘れたいことも忘れたくないことも、
時には自分の息子の顔も孫の顔も、
全て忘れて真っさらになる。
「人は次の人生に向けて記憶をゼロにする。
だから何もかも忘れてしまう。
赤子は何も知らない真っさらな状態だろう?」
そうしてそれからまた、記憶を増やしていく。
人は成長と共に記憶を得ていく。
覚えたいことも覚えたくないことも、
とにかく何でも覚えていく。
「逆に小さい時は自分の中に何にもないから、
とりあえず何でも覚えておこうとする。
記憶っていうのはそういうものなんだな。」
と、先生が話していたことを私は覚えているが、
先生はそんな話をしたことを覚えているのだろうか。
きっといつかは私も忘れてしまう。
だからこうして残しておこうと思ったのです。
『叶わぬ夢』
貴方のところへいきたいだなんて、
そんなこと叶わない夢だと分かっております。
何せ貴方と私では生きている場所が違う。
世界も時代も次元も、何一つとして同じではない。
仮にそのどれかが同じだったとしても、
私は貴方のところへはいけないのでしょう。
私は貴方と同じところへはいけないのです。
それは叶わぬ夢なのです。
貴方の視界に映りたい。
貴方と視線を交わしたい。
貴方にどうか私のことを知って欲しい。
そんなの全て馬鹿げています。
願うだけ無駄な夢なのです。
初めから決して叶うことはない夢なのです。
それでも今日も私は、そのような叶わぬ夢を糧にして、
このありふれた現実を生き抜いているわけです。
それはとても幸福なことで、
それはとても空虚なものです。
それが、私の人生です。
『君を探して』
君を探してくれる人なんてもう何処にもいないんだよ。
君がここからいなくなっても、
君の命が終わりを告げても、
もう誰も君のことを探してはくれない。
可哀想だね。
ね、僕もなんだ。
僕のことももう、誰も探してはくれない。
僕が何処にいたっていなくたって、
この世界には何の影響も及ぼさない。
それってとっても幽かだ。
取引しないか?
いつか君がいなくなった時は、僕が君を探してあげる。
君が何処にいたっていなくたって、
きっと君のことを見つけてみせるよ。
君の命が終わりを告げてもきっと、探してあげる。
だからどうか、どうか君は僕を探して。
他の誰もが見向きもしない僕を
どうか君だけは見つけてくれ。
お願いだよ。
『星』
ずうっと昔の光を今
ねぇ あなたと二人見つめている
あの子は変わらずあの場で光っているのかな?
今日も
すうっと私の瞳を今
ねぇ 透いて通っていった光
嗚呼 願わくは永遠ならいいのにな
まだ消えないでそこにいてステラ
『あの日の温もり』
初めて行った握手会。
大きくて温かかった貴方の両手。
あの温もりを忘れはしない。
大好きだった貴方達についていけなくなり、
推すのをやめて7年以上は経つでしょうか。
貴方達はとても大きくなりましたね。
ファンも増えてテレビに出る機会も増えた。
元気なら良いです。
昔、私は貴方達に幸せにしてもらったから、
今の貴方達が幸せでいてくれると嬉しい。
それは本心。
不倫とか活動休止とか色々あって、
正直推してなくて良かったって思ったよ。
今更何とも思わないしどうでも良いんだけど、
でもあの日のことは美化して覚えていても良いかな。
照明の光が強くて暑かったんだと言っていた。
だから手がめちゃくちゃ温かくなってたんだって。
じんわりとした熱に包まれて泣いた。
この人は実在するんだと知った。
貴方がどんなに最低な人だったとしても、
あの日の私にとってあの日の貴方は王子様だった。