『子供の頃は』
子供の頃はとても楽しかったの。
そう、楽しかった。
世界は希望で溢れてて、
まだ見ぬ何かに思いを馳せて、
いつか王子様が迎えに来るのを待っていた。
不思議な力が突然目覚めたり、
魔法も超能力もきっとどこかで存在していて、
そうでなくともラブコメみたいな世界が広がっていて。
これは何度だって言うけどね。
私は幼稚園児の頃から少女漫画を見てきたんだ。
何がリアルで何がフィクションかなんて、
判別できる訳ないだろ。
無知で幼気な痛い少女を責めないでやってくれよな。
まぁ、そんなこんなで。
歳を重ねるたびに僕は、
現実というものを知っていったわけです。
漫画の中みたいなことは起こらないのです。
漫画以上のことが起こったりもするけど。
子供の頃は楽しかったな。
あの頃の僕は何だって純粋に、本当に心から信じてた。
あり得ないことも可笑しいことも間違ったことも、
何だって良かったんだ。
無邪気に楽しめてたんだ。
僕が生きてるのは現実だから、
現実のことを知らないと恥をかくけれど。
それでも現実のことを知らない方が、
知らないままでいた方が楽しかったのかもしれない。
今日も今日とて子供になりたい。
『日常』
長い目で見たら何も変わらない。
そんな日常が好きなんだ。
この世界が続いてて、僕の生が続いてて、
良いことあったり悪いことあったり、
悪いことあったりするのが僕の日常だ。
それでもきっと地獄よりはマシで、
ある程度なあなあに生きれてるから。
良いことだって、
何一つとしてなかったわけじゃないから。
全部ひっくるめてそれが日常でそれが愛おしい。
俺はあまり変わりたくないから。
悪いことがあるのだって通常運転だから。
幸せすぎても恐ろしいから。
こんな日常が続きますように。
今日もなんてことない一日を過ごせますように。
僕もあなたも変わりなく、
変わりなくこの世に居られますように。
『相合傘』
相合傘をしている、彼女たちの薬指には不揃いの指輪。
「最近旦那が…」なんて愚痴りながら楽しそうに話す。
互いの目を見て、見つめ合って、
まるで恋する乙女のように頬を赤らめては微笑む。
夫と話している時よりもキラキラとした目。
夫と出かける時よりも気合の入った装い。
果たしてそれは偶々だろうか。
彼女たちはあくまでも友人同士である。
『落下』
落ちていくのが怖いかい?
君の足元のそれは、
もうすぐ崩れて無くなってしまう。
君は落下する。
落ちる。
足掻いたところで手も足も空を切るばかりだ。
何も掴めやしないし踏ん張れもしない。
それは恐怖を君に与えるだろう。
それでも落ちている間はまだマシだ。
これから君は、君の足元があった場所より更に下にある新しい足場へと着地するのだ。
けれども上手く着地できるかな?
下手したら君はぐしゃりと潰れてしまうだろう。
或いは足を折るか挫くか…。
頭から着地なんてユニークなことはしないでくれよ。
まぁ、怖くても無理に動かず流れに身を任せることだ。
君が無事着地できることを祈っているよ。
『1年前』
1年前言ったことを覚えてる?
「君を一生幸せにするよ」
あなたそう言ったのよ。
そして私と契りを交わしたのよ。
なのに何で私は泣いてるの?
全然幸せになんてなってない。
一生幸せにする、って言ったのに。
嘘だったんじゃない。
ねぇ、どうして何も言ってくれなかったの?
あなたが私を幸せにしてくれるなら、
私だってあなたを幸せにしたかった。
あなたはいつも私のことばかりで、
自分のことを大切にしなかった。
だから、あなたの分まで私が、
私があなたのことを大切にしてあげなくちゃいけなかったのに。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。