『遠くの街へ』
遠くの街へ出掛けるの。
お気に入りのワンピースを着て。
貴方にもらった指輪をはめて、
貴方にもらった香水をつけて、
何処か遠いところへ行くのよ。
貴方と通ったカフェも、
貴方と座ったベンチも、
貴方と歩いた道もない。
貴方の居ない街へ行くの。
きっと私はそこで、
見たこともないような景色を見て、
食べたこともないようなご飯を食べて、
聞いたこともないような体験を沢山するのだわ。
それはさぞかし楽しいことでしょうね。
けれど私は、
見たこともないような景色を見たとき、
食べたこともないようなご飯を食べたとき、
隣に居るはずの貴方を思い出してしまうのよ。
「貴方なら何て言うかしら」
「貴方にも見せてあげたいわ」
「貴方はこっちの方が好きそうね」
そんなことを思いながら知らない街を歩くの。
まるで恋する乙女のようにね。
『小さな命』
命に小さいも大きいもないと思う。
死後の世界があるならば、
人間は等しく裁かれる筈なんだ。
産まれてすぐに亡くなった赤子を除いてな。
生きている限り何かの命を奪わずにはいられない。
大抵の場合それは自分の命を守るために必要なことだ。
健康のためには肉や魚を食べた方が良いし、
自分の身を襲う恐れのある害獣は排除した方が良い。
虫だって害をなすなら排除した方が良い。
まぁ、僕たちは害をなさない虫だって排除するけど。
命を奪うという罪を犯したことのない人間なんて、
この世には居ないと思う。
直接的ではないとしても、間接的には犯してる。
だってそれが生きるってことだから。
生きることは罪なんだよ。
というのはまぁ、
命を奪うことは罪だと感じている僕の考えでしかない。
僕は魚も肉も大好きだし、虫は大嫌い。
だから死後は確実に罪に問われます。
あな恐ろしや。
『太陽のような』
眩しくてとても直視できない。
熱くてとても近寄れない。
大きくてとても包み込めない。
なら、貴方はずっと一人なの?
誰が貴方の頭を撫でて、
誰が貴方の隣で笑って、
誰が貴方の体を抱きしめて、
誰が貴方の涙を拭う?
溢れんばかりのエネルギーを抱えて、
この世に光をもたらして。
でもきっと貴方にそんなつもりは一切なくて、
ただ存在しているだけなんだ。
『優しさ』
「君にはこれが似合うよ」って言ったのは、
優しさなんかじゃなくてもっと醜いもので、
彼奴の好みの格好なんてさせたくなかったからなんだ。
『こんな夢を見た』
お姫様になる夢を見た。
少女漫画みたいな恋をして、
好きな人と結ばれる夢を見た。
魔法使いになる夢を見た。
探偵になる夢を見た。
小説家になる夢を見た。
二次元へトリップする夢を見た。
どこかに自分の分身が存在している夢を見た。
実況者になる夢を見た。
小説家になる夢を見た。
いつか誰かが救ってくれる夢を見た。
ニートになる夢を見た。
自分が考えた作品が世に出る夢を見た。
小説家になる夢を見た。
推しに終わらせてもらう夢を見た。
もの好きな愛好家に飼われる夢を見た。
楽に生きていく夢を見た。
夢を見る夢を見た。
夢を見る夢を見た。
小説家になる夢を見た。