『冬は一緒に』
冬は一緒にいてください。
春も夏も秋も我慢するから、冬くらいは一緒に。
だって寒いでしょう?
ひとりぼっちでは凍えて死んでしまうでしょう?
だから隣にいてください。
一緒に冬を乗り越えようよ。
雪だるまを作りましょう。君にそっくりな。
そしたら寂しくないかしら。
でも残念、雪なんて降らないの。
こんなにも寒いのにね。
春になったら暖かくなるだろうか。
冷たくなって動かないあなたも春の温度に溶かされる?
そうだといいな。そうだとな。
『距離』
距離がある。
距離があるな。
君と私には距離がある。
隣にいるのにいつだって君は僕より先にいるようだ。
事実距離がある。
君は僕より早く大人になるし、
僕がいなくても平気らしい。
僕だってまぁ、君がいなくても死にはしないけど。
距離がある。
埋まらない距離が埋まらない。
埋めたいわけでもないけれど、一人ぼっちは嫌だから。
君に隣にいて欲しいんだ。
あんまり遠くへ行かないで。
私がここにいる内に君は先へ行ってしまう。
停滞していたいのに。変わらない方が楽なのに。
子どものままが幸せなのに。それは私だけなんだ。
一緒に居てはくれないの。
距離は広がるばかりなの。
仕方がないから私は自分で自分を慰める。
置いていかれることよりも、
変わることの方が苦痛だから。
『終わらせないで』
「中途半端に終わらせないで。
作るならちゃんと最後まで作って。
あんたが勝手に産み出したんだから、
責任持って墓に入るまでを描いてよ。
誰も俺のことは知らないんだ。
俺たちのことはさ。
あんたしか知らないんだよ。
これからの俺のことも、これまでの俺のことも、
知っているのはあんただけなんだ。
決められるのはあんただけなんだ。
俺ですらないんだよ。
あんたにしか続けさせられないし、
あんたにしか終わらせられないんだ。
あんたが終われば俺たちも終わるんだ。
あんたの命はあんただけのものじゃないんだよ。
それが俺たちの命なんだよ。
だから終わらせないで。
終わらせるなよ。
あんたが生きてる限り俺たちは、
停滞してたって生きてるんだから。
あんたは俺の死を決めてるらしいけど、
描かれない限り実行はされてないから。
それにあんたは俺の来世を決めてるし。
どんだけ俺のこと好きなの。気持ち悪い」
___________________________________________________
気持ち悪いだって。言われちゃった。
また無理やり引っ張り出して口開かせたから。
いつもこんな役割ばかりだね。ごめんね。
『どうすればいいの?』
人に聞く前に自分で考えろよな。
考えもしないで聞くなよな。
お前がどうすればいいのかなんて、
他人にゃ全く分かんねぇし、関係のないことなんだ。
どうしたっていいんだよ。
お前の自由にしろよ。
責任を持ちたくないんだよな。
自分の言動で間違いが起こった場合、
それを他者のせいにできた方がずっと楽だから。
「お前がこうしろって言ったから…」
だから、俺は悪くないんだって。
そう言えるようにしているんだろう。
いつでも逃げれるようにしているんだ。卑怯者め。
どうすればいいのかなんて、みんな分かんないんだよ。
答えを求めても出てこないよ。
それでもどうにかしなきゃいけないから、
どうにかこうにかして乗り切ってんだよ。
乗り切れてるのかなぁ。
『たくさんの想い出』
家族のことも友人のことも、
推しのことも好きなもののことも、
いつかは全て忘れてしまうのでしょう。
恐ろしくて堪らない。
私が最後まで覚えていられるものは何だろう。
最後に私の中に残るものは一体何なのだろう。
老いるにつれて記憶が無くなっていくのは、
様々なことを忘れていってしまうのは、
次の人生に向けて頭を空っぽにするためらしい。
赤子の脳は空っぽでしょう?
今世で覚えたこと全て忘れて空になって、
そしたらまた空の赤子として生まれるんだ。
っていうのは高校の時に生物の先生が言っていた話。
授業とは何の関係もない雑談を覚えている。
授業の内容は何も覚えていないのに。
こんな私にも忘れたくない想い出はたくさんある。
それってとても恵まれてる。
私は想い出に浸って生きていられる人間だから、
想い出は私にとって幸福の源だから、
できるだけ長く覚えていたい。
だからいっそ、忘れる前に消えてしまいたい。
幸せなまま人生を終えたい。