冬山210

Open App
7/18/2022, 10:44:04 AM

『私だけ』

私だけが知っている。
私が作ったあの子達のこと。

あの子の重い過去も、あの子の好きな相手も、
世界の仕組みも秘密も、この先の物語も、
全部、私だけが知っている。

いつかそれが、私だけのものじゃなくなったら。
私以外の誰かにもあの子達を知ってもらえたら。
私が死んだ後もあの子達は生きられるんじゃないかと、そう思うんだ。

まだ何もしてないけど、まだ何も始められてないけど、
いつか始められたら良いな。
私だけの物語をみんなにも見て欲しい。
大好きなあの子達のこと、もっとたくさんの人に知ってもらいたい。そして愛してあげて欲しい。

今のままじゃあの子達は、私が死んだら消えてしまう。
誰にも知られず消えてしまう。
きっとどこかの誰かの心に刺さるはずなのに。
そんなの勿体無いよね。


小さな小さな一歩を踏んでみるか。
昨日のあれは時雨美春と冷染麗夏の物語。
それでいて、シグレとレイカの物語。
この二人は前世から結ばれているんだよ。

なんて、書いたところで誰の記憶にも残らない。
いつかちゃんと形にして、ここより広い海に流そうね。

7/17/2022, 7:44:14 PM

『遠い日の記憶』

君は覚えてないだろう。
女の子に声をかけてばかりの俺を叱ったこと。
嫌なことがあるとすぐ煙草を吸う俺を叱ったこと。
いつまでも母さんのことを引きずっていた俺のことを
叱ってくれたこと。

君が俺のために怒ってくれて、俺のことを思って泣いてくれて、それが何より嬉しかったんだ。
君のおかげで俺の人生は救われたんだ。


最期の時、俺は君を守ったつもりだったんだけど、
多分守れてなかったんだね。
あの後君もやられちゃったんだろう。
悔しいな。君にはもっと長生きして欲しかった。

けど、一緒に終われたからこそ、この平和な世界でまた君と生きていられるんだと思う。


もう君は昔の君じゃない。
かつての出来事を覚えているのは俺だけだ。

それでも、君は相変わらず優しくて、美しくて、厳しくて、俺のことを叱ってくれる。俺の隣にいてくれる。
例え君が何も覚えていなくても、君との時間が無かったことになるわけじゃない。そうでしょ?

ただ、君の隣で君の笑顔を見続けたい。
前世の記憶があろうとなかろうと、今も昔も俺の願いは変わらないんだ。

7/17/2022, 8:09:08 AM

『空を見上げて心に浮かんだこと』

空は広くて大きくて、遠いよね。
当たり前のように僕らの頭上に広がっている。

空の先に宇宙があることは、
海の底に深海が広がっていることと
同じことだと思うんだ。
深空とでも呼べば良いのにね。

深海も宇宙も未知に溢れているけれど、
人はどれだけ深く、どれだけ高く、
この世界を知ることができるのだろう。

ちょっとだけ悲しくなった。
少しだけ怖いよね。

大丈夫、明日も生きていけるよ。
終わりの日は決まっているのだから。

7/11/2022, 3:05:51 AM

『朝、目が覚めると泣いていた』

朝、目が覚めると泣いていた。
そんなことが一度でもあっただろうか。

泣くほど悲しい夢も、泣くほど怖い夢も、
多分一度も見たことがない。

……ああ、でも、子どもの頃に一度だけ。


お母さんと一緒の布団で寝てたとき、
怪獣に追いかけられる夢を見たの。

怖くて怖くて、「逃げなくちゃ!」って思って、
必死に手足を動かした。

ふと目が覚めたのだけど、まだ寝ぼけていて、
私は現実でも必死に手足を動かしていた。

そしたらびっくり。

私は走ってるつもりだったんだけど、
横にいるお母さんのことをぽかぽか叩きまくってたの。
お母さんは起きてなかったけど、顰めっ面になってたのを覚えてる。あの時はごめんね。

兎に角そのくらい怖かったの。
子どもだったこともあって、あの時だけは泣いていたのかもしれない。もうずっと昔の話だけれど。

7/6/2022, 2:56:28 AM

『星空』

学校に泊まったことはあるかい。
夜の屋上に出たことはあるかい。
あれは人生で一番幸せな時間だった。


重たい扉を開けるだろう。
やけに高い段差を上がって外に出る。
少し肌寒い。
長袖のジャージが暖かい。

夜景が綺麗だな。
ずっと向こうの明かりまで見える。

上を見ろよ。頭上を見ろ。
ほら、輝いていらっしゃる。

屋上にヨガマットを敷いて寝そべるんだ。
見てみろよ。その目に焼き付けろよ。
なぁ、プラネタリウムなんか比じゃねぇな?

目を閉じて風の音を聞いた。
目を開けばこの世で一番綺麗な景色が見えた。

幾つもの星々が、きらきらと、きらきらと、眩しい。
こんなにも広い星空を一切の障害物なしに、
見られてしまって良いのだろうか?
贅沢がすぎるぞ天文部。


「夏の大三角の真ん中にいるはずなんだよ」
そう言って君と、こぎつね座を探した。

あの一夜を忘れることはない。

Next