冬山210

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5/4/2022, 11:19:52 AM

『大地に寝転び雲が流れる・・・目を閉じると浮かんできたのはどんなお話?』


「羊の雲があるよ」

気づけば一人の少女が隣に座っていた。
俺の目が開いたのを見て、少女は空を指さした。
恐らくその、羊の雲とやらを俺に見せようとしているのだろうが、どの雲も同じに見える。

「昔の人は空に羊がいると思ってたのよ。
羊と仲良しだったから、空にいるのも羊だと思ってた」

「……そんな話どこで聞いたんだよ」

空に羊がいると思ってた?
いくら昔の人だからって、流石に空に羊がいるとは思ってないだろ。

「お空に詳しい先生が教えてくれたの。
羊飼いがお空を見て羊を探していたんでしょう?」

何か間違っているのか?と問うように首を傾げる。
少女は至って真面目なのだろう。本気でその、羊の話を信じ込んでいる。
しかし羊飼い…確かにそんな話、聞いたことがあるような……。

「…お前、それ覚え間違えてるよ。
羊飼いが見てたのはこんな真昼の青空じゃなくて、夜の星空だろ。羊だって言ってたのは雲じゃなくて星。
星座の歴史の話だろ?」

まぁ、羊飼いが星を見ていたというのも、一つの説でしかないが。
少女は星座について先生に教えてもらったのだろう。
そして自分が学んだ知識を他者に教えたかった。覚えたての言葉を使いたがるのと同じだ。

「えー、でも…雲も羊だもの…」

そう言って頬を膨らませる。
その姿が何だか、少し、愛おしい……。





目を覚ますと辺りは真っ暗だった。
いつの間にか夜になってしまっていたようだ。
何か夢を見ていたか…?思い出そうとしても思い出せないし、夜風は冷たい。早く帰らないと風邪を引いてしまいそうだ。

「…お、羊の群れだ」

空にはたくさんの星が出ていた。

5/2/2022, 11:00:03 AM

『優しくしないで』

頑張ってないから「頑張らなきゃ」って言ったら、
「頑張りすぎないで」って言われた。

貴方が何を知ってるんだよ。

貴方の中の私は頑張ってたのか?
こちとら心機一転頑張るぞの気持ちだったのに、
そんな風に言われたら心揺らいじゃうだろ。
別に頑張りたいわけではないんだからさ。


世界があまりにも優しすぎる。
何もしていない僕に優しくしてくる。

少しくらい鞭を与えなきゃ駄目なのに、
僕は生まれてからずっと飴を与えられている気がする。
甘やかされている。


これ以上優しくしないでほしい。
このままじゃいつか叱られたとき、
耐性がなさすぎて無駄にダメージを受けてしまう。

叱られたくはないけれど、
叱られたことがないのは困るんだよ。

5/2/2022, 8:56:25 AM

『カラフル』

マーブルチョコとか、ドロップス、グミ、ラムネ。
絵の具、色鉛筆、クレヨン、折り紙、色画用紙。
公園の遊具、遊園地、イルミネーション、花火……。

ランドセル。洋服。髪色。

僕たちは昔から、どんな色が好きかと問われてきた。
自己紹介でもよく言うし、初対面の人との話のきっかけにもなる。当たり障りのない例文。


あまりにもカラフルだ。エメラルドグリーンが好きだなんていう小学生が割といた。金や銀の折り紙は重宝された。赤い上履きは女子みたいで嫌だと言う男子高校生がいた。


僕の記憶は色なしでは語れない。
それは僕の瞳が色を捉えられるからだ。
カラフルを知ってカラフルと共に生きていく。

4/30/2022, 2:34:15 PM

『楽園』

楽園とは真っ白な空間だ。
ただ地面には一面花が咲いていて、そこで彼女達は微笑むのだ。皆揃いの白いワンピースを着ている。

そこには私を害するものは一つもない。
彼女達を害するものも一つもない。

やさしくて穏やかであたたかくて、儚い。
心地の良い場所。



だけど、ずっと楽園にいて、それで私達は幸せなのだろうか。そこは本当に楽園なのか?

4/27/2022, 5:16:59 AM

『善悪』

善悪なんてころころ変わる。

人によって違うのは当たり前だけど、
状況や気分によっても変わってしまうから、
昨日善だと思ったものが今日は悪かもしれない。
本当に不確かなもの。

善人にも少しは悪なところがあるし、
悪人にも少しは善なところがある。
と、僕は信じていたい。

自分が悪になったとき、全人類から「お前は悪だ」と責められたら怖くて悲しくて泣いてしまうから。
だから僕は絶対的な悪はないと思うし、絶対的な善もないと思う。


嫌われ者のあの人にだって、きっと善いところはあったんだ。あの人が亡くなったら悲しむ人は必ずいる。

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