#13 現実逃避
うまくいかない、なにもかも。
課題も、卒業論文も、
就職活動も。
"社会人"になるために
必要なことだからこそ
まわりと比べて暗い気持ちになる。
「今日はさ、一緒に出かけよう」
貴方の言葉にぎこちなく頷く。
逃げたいって思ってたの、バレた?
「これ、現実逃避じゃないから。
き・ぶ・ん・て・ん・か・ん!」
心を読んだのか貴方は
そうやって私に言い聞かせる。
それがなんだか可愛くて。
いつの間にか気が抜けて
私は笑っていた。
#12 君は今
君は今、どこで何をしていますか。
お互いの夢を追うために
好き同士で離れた私たち。
私は無事に、夢を叶えたよ。
貴方は夢を、叶えられたかな。
約束なんかしてないけれど
ふたりの夢が叶った時、
また私たちは会える
勝手にだけど、
そんな気がしているよ。
#11 安心と不安
貴方とのメッセージのやりとり。
それはとても安心するもの。
だけどそれは
時にすごく不安になるもの。
私がメッセージを送ると
すぐに返してくれる。
スタンプでもなんでもいい、
会話出来ていることが嬉しい。
だけどメッセージを送ったあと
なんじゅっぷん、
なんじかんも
返事が来ないととてもこわい。
なにか言っちゃったかな、なんて
たくさん考えちゃう。
きっと忙しいだけ。
メッセージがないのは、
たまたまタイミングが悪かっただけ。
だってほら、
明るいメッセージが届いた。
#10 こんな夢を見た
私より少し遅く起きてきた彼が、
少し泣きそうな顔をしていた。
「こんな夢を見た」
そう切り出すと
涙をポロポロと落としながら
ゆっくり話し始めた。
「キミが去っていく夢だった。
おれが必死に追いかけるのに、
キミは待ってくれなくて…」
「夢の話だよ」
大丈夫、と頬を伝う涙を拭うと
「ちゃんと、ずっと一緒にいてくれる…?」
なんていうから
それがとてつもなく愛おしくて
私は頷きながら泣き虫な彼の頭を
やさしく撫でた。
#9 タイムマシーン
アルバムのページをめくって
貴方の歴史を辿る。
無邪気に笑う顔に
少し不服そうに歪んだ顔、
友達とじゃれ合う姿。
貴方の過去に私はいない。
ちょっぴり残念だな、なんて。
もしもタイムマシーンがあるなら
すぐに飛び乗って
出会ったことの無い
過去の貴方に会いに行くのに。