013【いつまでも捨てられないもの】2022.08.17
捨てることがめっちゃ苦手。だから、家の中にはいつまでも捨てられないものがどんどん溜まっていく一方だ。
例えば、懐かしい書き損じ。着古した子どものお気に入り。さっと捨てちゃえばいいのに。思い入れが深すぎて、せめてあともうちょっと、なにかに使ってあげられないかしら、と手許に引き戻してしまう。
それでも、溜め込んだまま10年も20年も経ったものは、さすがに手放そうかという気持ちにもなるけどね。
このあいだもやっとなにか捨てた。あぁ、ネット上の拗れた人間関係だった。捨てるとは、先にすすむ踏ん切りをつけることだと、そのとき強く思った。
きっと、私の時間の歩みは、ゆっくりなのだろう。だれもがさっと踏ん切りをつけて、さっと始末をつけていくものが、いつまでも手放せないのは。
うまく片付けられなくて散らかった部屋で、これからも、私の速度で生きていけばいいさ。まるで、深海のシーラカンスのようにね。
012【誇らしさ】2022.08.16
あぁ、やなお題。ネットニュースのタムラインで、「自己肯定感の高め方」なんて文字列あったら、わらにもすがる思いでポチッとしては、自分にはかなわないと失望ばかり重ねてます、ってーの。
どうかおねがい、私の黒歴史をえぐりに来ないで、自己肯定感の高い人たちみんな敵です。
正直、今回のお題はスルーだな、と思った。
だけど、そのわりには。意外にふんわり、いまの自分にマッチしてて。「誇らしさ」という言葉が、自分を温かくつつみこんでくれる感じがしたんだ。
ちょっとだけ背筋が伸びて。いつもより目が輝くような感じがして。なんだよこの言葉。おもったよりもいごこちいいじゃん。
自己肯定感とか自尊感情とかが大事です、とか近頃とみに喧しいけど、ぶっちゃけ目指す姿がよくわからないよね。そんなときは自然に学ぼう。だって、いまちょうど、庭にテッポウユリの花が咲いてるから。
長く茎をのばして、ひとりきりですっきりと立って。たくさんつけた蕾をひとつづつ、いま、花開かせている。見られていようがなかろうがおかまいなく、地べたになぎ倒されていようがおかまいなく。
自分は自分として、花開いて、やがて、花は落ちて、雌蕊は種になる。
テッポウユリは、枯れてゆく様さえ、誇らしさを体現している、と私は思うんだよね。
011【夜の海】2002.08.15
子どもの頃、天体ショーを見るために、夜の浜辺につれていってもらったことがある。といっても、皆既月食を2、3度くらいだけどね。あとは、ハレー彗星。
ずーっと上ばっかり見てワクワクしてたから、完全に影になった月食の月の赤さとか、一瞬だけ双眼鏡で捉えることができたハレー彗星とか、くっきり覚えてるけど、夜の海がどんなだったかは全然記憶にない。
それから、親のありがたさは。大人になってから、むしろくっきりしてきた。私はそこまで子どもにやってあげられてないから。
010【自転車に乗って】2002.08.14
通学通勤の足はもっぱら自転車だった。
カッコよくいうと、風と景色と一体化できるから。でも、ホントは、スピードを出すのが苦手で、なるだけ自動車を運転したくなかったんだ。
坂の上のいまの家に引っ越してから、はじめて原動機付自転車に乗るようになったんだけど、時速30km出すのすら、いまだに冷汗ものなのだ。
自転車に乗ってるときは、耳はふさがない。耳許を切る風の音も街路樹のざわめきも鳥の声も、それから路面電車のモーターの唸りに、大通りをゆきかう自動車の喧騒すらも、ぜんぶ音楽に聴こえるから。
一年を通して一日一日うつりかわってゆく音楽を。二度と帰ってくることのない、今日この時だけの音楽を。聴くことのできるチャンスをのがしたくなかったから、ペダルのリズムを伴奏に、毎日貪欲に耳を澄ましていた。
だけど、すぐに喘息がでたからねぇ。本音をいうとかなりツラかった。とくに冬の向かい風とか、冷えこんだ風の日。
その点、原付はいいね。どれだけ遠くまで走っても、呼吸が苦しくなることはない。だけど、自分のたてるエンジン音ですべての音楽がかき消えてしまう。
やっぱり、電動アシスト自転車に転向しようかな……そのためにも、あともうちょい、体力を回復させなきゃだけど。
009【心の健康】2022.08.13
もしも、心にも形があって。
心臓みたいにからだのなかから取り出すことができるのなら、傷ついたところに絆創膏をはったり、手術をほどこしたりして治療してあげられるのに。
あるいは、模型をゆびさしながら、「ここにあるナントカがカントカなっちゃったせいで、元気が充分には出なくなっちゃってるんッスよ」なんて説明も、しごく簡単にできちゃうんだろうけど。
形が無いせいで、うまく機能してないことが理解してもらえない。
理解してもらえないことがしんどさを倍増させてることも、気づいてもらえない。
心専用の造影剤、誰か発明しておくれ。
レントゲンで内臓を撮影するように、見えない心の写真が撮れるように。