010【自転車に乗って】2002.08.14
通学通勤の足はもっぱら自転車だった。
カッコよくいうと、風と景色と一体化できるから。でも、ホントは、スピードを出すのが苦手で、なるだけ自動車を運転したくなかったんだ。
坂の上のいまの家に引っ越してから、はじめて原動機付自転車に乗るようになったんだけど、時速30km出すのすら、いまだに冷汗ものなのだ。
自転車に乗ってるときは、耳はふさがない。耳許を切る風の音も街路樹のざわめきも鳥の声も、それから路面電車のモーターの唸りに、大通りをゆきかう自動車の喧騒すらも、ぜんぶ音楽に聴こえるから。
一年を通して一日一日うつりかわってゆく音楽を。二度と帰ってくることのない、今日この時だけの音楽を。聴くことのできるチャンスをのがしたくなかったから、ペダルのリズムを伴奏に、毎日貪欲に耳を澄ましていた。
だけど、すぐに喘息がでたからねぇ。本音をいうとかなりツラかった。とくに冬の向かい風とか、冷えこんだ風の日。
その点、原付はいいね。どれだけ遠くまで走っても、呼吸が苦しくなることはない。だけど、自分のたてるエンジン音ですべての音楽がかき消えてしまう。
やっぱり、電動アシスト自転車に転向しようかな……そのためにも、あともうちょい、体力を回復させなきゃだけど。
8/14/2022, 1:20:27 PM