ただ隣に居たかっただけ。
子供の時分は彼の後ろについて行くのに精一杯の
なんの取り柄もないただのガキだった。
強いて言うなら人見知りしなかったことだけだ。
まぁそれが当時ただのヤンキーにしか見えなかった
金髪の少年に気に入られた理由なのだろうが。
背中を追いかけていた。時々彼が振り返って、切れ長の双眸をふっと弛めておれがちゃんと着いてこれているかを確認してくれる。それが嬉しかった。それだけで十分だったのに。
俺は頑張ってしまったのだ、それを励みに。
彼に追いつこうとしてしまったのだ。
彼の横に行きたいと、願ってしまった。
いつからか、彼はこちらを確認しなくなってしまった。
見なくても着いてこれると思われているから、だと信じたい。
隣に並べるようになった。でも何故だろうか、あの頃の距離の方が近かったと思ってしまうのは。
他者から賞賛を得る度に、あの頃が遠ざかっていく。
望んでお前と対等になったはずなのに。
きみに守られるだけの存在だったあの頃のなんの取り柄もないガキが心底妬ましい。きみに振り向いてもらえるおれが。
(『何もいらない』とすら、もう言えない)
作者の自我コーナー
いつもの。ないものねだりしてしまう全て持ってる彼の話。
でも本当に『ないもの』なんです。だってあの人の中では彼はいつも対等な存在だから。今更後ろに下がろうとしたら許さないですし、引っ張って同じラインに立たせますし、おすし。
もしも未来を見れるならどうしますか?
――怖いので見たくない。
『嫌な未来やったら嫌やん。それに未来は切り拓くもんやし』
――今をより良くするために見たい。
『未来はいつか今になるからね』
――もしものことに備えておきたいので見ておきたい。
『1回見とけば覚悟出来るかなって』
――未来は変えられるから、1つのストーリーとして見たい。
『あくまで可能性のひとつとしてね。その未来に僕らが行き着くとは限らんし』
――初見の楽しさがなくなるから見ない。
『ただでさえ最近しなくなったドキドキワクワクを自分から消すような事せえへんよ。もったいない』
(僕らはまだ可能性の途中)
作者の自我コーナー
あの人たちならどう言うかなって思っただけです。
一番書きたかったのは最後のお方。
考えはバラバラ、でもみんな5人の未来を考えているのです。
色という概念を知らなければ、
この世界もそれなりに楽しかったのに。
あなたという色を知ってしまってから、
何も無い世界がとても退屈に思えるの。
作者の自我コーナー
残り時間5分とかで書き殴ったものです。
無色ってことは、黒もないんじゃない?無彩色のこと?
透明ってことかしら?って全然定まらなかったのでとっても抽象的な文になりました。最近お題がムズい。
「桜、散ってもうたな」
「へ?……あぁ、昨日の大雨でほとんどいかれてもうたな」
いきなり声をかけられて素っ頓狂な声が出た。
俺に対しての言葉なのかも定かでは無いが、
俺と違い独り言を言うタイプでもない。
「……なんやねん、ニヤニヤして」
「いんやぁ、別に?あんたにも桜を愛でる情緒があるんやなぁ思て」
「俺も大人になってもうたってことやな」
「なんでちょっと嫌そうやねんな」
俺からするとずっとあんたは子どもで、お兄ちゃんだった。
永遠のピーターパン。見た目もやけど、性格も変わらない。
「ガキの頃は動かんもん見て何がおもろいねんって思ってたけどなぁ、ちょっと切ななんもん」
「「なんでやろなぁ……」…ちょお、被らせに来んなやお前!」
「いややってあんた!フリがむちゃくちゃやもん!どこに接続してんねん!」
「いやでもあれですよ、桜が散ると寂しくなるのはほんまですよ。いつかは散るもんやけど雨風とか理不尽やんか。もうちょっと気ぃつこたってもええのになぁって」
ご自慢の唇をむにと突き出すと、お気に入りのコーヒーショップの一番大きいサイズのブラックを飲んだ。
そういうとこは変わったのかもしれへんな。かなり遠回しだとしても、この人は弱音を吐けるようになった。
「桜の花から葉桜なるだけやん。切り倒されたわけとちゃうやろ?また来年の今頃になったら大輪の花咲かせてくれるやんか。次咲かせるために散るねん、次の出会いのための別れや。必要な過程やがな」
実際は病気にかかる可能性もあり、来年拝めるかは微妙なところではあるが、今は必要な情報では無い。
「相変わらずポジティブやなお前は」
「そこが唯一のええとこやからな」
「なんでそこだけそないネガティブやねん、いっぱいあるわ!」
自分の事のように顔を赤くして、ムキになる。
でも、結局照れ屋やから言うてくれはせえへんねん。
嗚呼やっぱり変わらない。
『桜散る』
(咲いても散っても桜は桜、君は君)
作者の自我コーナー
いつもの。
なんでやろなぁ……桜見ると切ななんねん、です。
自分のことになると卑屈になる彼を全力で否定するあの人が好きです。輪廻と一蓮托生という裏テーマ。
8人の夢を見た。なつかしい記憶だ。
もう俺たちの原型なんて誰が覚えているのだろう。
振り返りの映像でですら切り取られてしまう存在。
もちろん、覚えている。
だからこそ俺たちはこの数字に拘り続けたのだ。
世界中の人間が忘れても、俺達は忘れるまいと。
でもなんで今更そんな夢を。
もう過去は振り返らないと、未練などないと思っていたのに。
『夢見る心』
(俺も知らない俺の心)
作者の自我コーナー
夢を見る深層心理のお話。でも夢見た心も夢見る心も積み重なって自分になるんですよね。
夢は自分を叶えるために生まれた証だからって歌詞が好きです。