ほんのり香るゆずの匂いに顔を顰める。
柑橘系の匂いはどうも苦手だ。甘さを感じられずただ酸っぱいだけの果実。
冬至を経て、どこもかしこもゆずゆずゆず…ほら、季節のアイスクリームもゆずだ。全く…飽きないよなぁ。
ゆずなんてただの添え物で結構だ。
子供にはまだ早く、メインディッシュを食べたいが故にそっと残される、そんな添え物で結構。
そして、作る側も残されても何も感じない添え物、それで結構。
まるで、僕みたいに。
この頃会社は上手くいかないし、彼女にも逃げられるし、ダメ人間の抽象化。
やっぱ、似たもの同士は嫌いだよ。なあ、ゆず。
お前は残り物で結構だ。誰からも見られることもなく、ただ添えられてる…色味を良くするためだけの食べ物になれない失敗作。
だけど、そっと…
口に含めば広がる酸味。
自然と雫が垂れ落ちる。
なんだか、とても、
「懐かしい味だな。」
「だってさ!?」
「ねえさ!?」
「あのさ!?」
今日も今日とて大袈裟に泣き叫んでとりとめのない話ばっかしてる。
僕がいくら相槌を打つだけだとしても「聞いてる!?」なんて聞いてこない。
僕がちゃんと話聞いてるって、理解してるんだなって考えると心がポカポカする。
感情論ばかりで話はめちゃくちゃ。屁理屈上等。心ちゃんだとか綾音ちゃんだとか忙しいな。
でも、それでも
「ねえ聞いてよ!今日もさ!!」
とりとめのないこのめちゃくちゃな愚痴大会が、
たわいない日常が、
僕目掛けて一直線に駆け寄ってくる君が、
たまらなく愛おしいと思えるんだ。
僕がくしゃみひとつこぼすと、隣にいる君はくすりと笑う。
「風邪かな?」
「さあ、噂されてるのかもね。」
秋風ひとつ僕らの横を通り過ぎ、なんだか置いてかれてる気分だな、なんて。
雪を待つ君を待つ
ここにはいない君を待つ
君はもうここにいないのに
イルミネーション眺めてる君に見とれてる僕。
「綺麗だね。」って笑う君に「君も綺麗」だなんてクサイ言葉言えたらどれだけいいことか。
脳内で流れる「くーりすまーすがこーとーしーもやってくーるー」…今日はケンタッキーにしよう。
クリスマス、かぁ。今年ももう終わりなんだな。
感慨深い。
もう高校生になって、サンタなんて来なくなったけど懐かしいな。
「うおっ!?」
いきなり顔に暖かいものがつけられてびっくりする。
「なに?」
「へへ、トリック・オア・トリート」
「…?」
すごく無邪気に笑ってるところ申し訳ないけどハロウィンは過ぎたよ。
まあ、どちらかというとサンタさんからのプレゼントかな。
「お菓子くれなきゃいたずらしちゃうぞ」
やっぱハロウィンと勘違いしてる。そんなことある?
まあいいや。
サンタさんへ
願わくば、来年も彼女と同じ景色を見られますように。
次こそは、絶対に伝えるんだ。
「君は綺麗だ」って。
あーあーあーあー。今度は脳内にPretender流れてきちゃったじゃんどうしてくれんの。