イルミネーション眺めてる君に見とれてる僕。
「綺麗だね。」って笑う君に「君も綺麗」だなんてクサイ言葉言えたらどれだけいいことか。
脳内で流れる「くーりすまーすがこーとーしーもやってくーるー」…今日はケンタッキーにしよう。
クリスマス、かぁ。今年ももう終わりなんだな。
感慨深い。
もう高校生になって、サンタなんて来なくなったけど懐かしいな。
「うおっ!?」
いきなり顔に暖かいものがつけられてびっくりする。
「なに?」
「へへ、トリック・オア・トリート」
「…?」
すごく無邪気に笑ってるところ申し訳ないけどハロウィンは過ぎたよ。
まあ、どちらかというとサンタさんからのプレゼントかな。
「お菓子くれなきゃいたずらしちゃうぞ」
やっぱハロウィンと勘違いしてる。そんなことある?
まあいいや。
サンタさんへ
願わくば、来年も彼女と同じ景色を見られますように。
次こそは、絶対に伝えるんだ。
「君は綺麗だ」って。
あーあーあーあー。今度は脳内にPretender流れてきちゃったじゃんどうしてくれんの。
「先輩!!かっこいいです!!」
「ウン、ありがとー」
「先輩!!今日もイケメンですね!!」
「ふふ、ありがとうございます」
なんて妄想しながら、
私は今日も、
「うへえ、ローディング長ぁ…あっ、先輩おはようございます!!!」
別次元に仮初の愛を注ぐ。
「アイツムカつくよねー」
「ほんとそれなー。空気読めないよねー。」
またあの子の悪口。私はいちごミルクを飲みながら軽く聞き流す。
混ざりきってないミルク単体の味に顔を顰めながら一気に飲み干す。
「綾音もそう思わね?」
「え?ごめん。聞いてなかった。」
「ほんと綾音話聞かないよねー」
「うん。いちごミルク切れたから買ってくるね。」
「綾音ってほんとマイペースだよねえ」なんて笑う友達の声を背後にいい感じに話の輪から抜ける。
あれは、なんだか話しづらかった。
別に悪口を言うななんて言わない。嫌なことははっきり嫌だって言っていい権利は誰にだってある。
ただ、本人が傷つかなければそれでいい。
「ねえ男子!!ちゃんと課題やってよ!!」
「うげっ、まだ心がなんか言ってんぞー」
あ、あの子だ。今怒鳴ってる。
名前、なんだっけ。心、そう。木村心。そんな名前だった気がする。
キリキリと甲高い声を出して怒鳴りつけてる。正直私もちょっと苦手。
なにも間違ったことはしてないと思うけど、声が大きい。耳がキーンってなる。
でもみんなは、心、え?多分、心がウザイって。空気読めないって。
空気読めないって、私にも刺さる。
でもさ、なんだろう。
うん、わかんないや。
上手く、言葉に出来ないけど。
心は、傷ついてないのかな?
傷ついてたら、すごく申し訳ない。
自分が怒られるかもなんていうただのエゴだし、自己防衛なんだけど。
心にも、心があるんだよ。
なんつって。
数年後
「綾音、アンタカフェオレ好きだねー。」
「うん。そうだね。」
ぐっと甘味と苦味を一気に飲み干す。
「あれ?学生時代はいちごミルク飲んでなかったっけ?」
「覚えてないや。」
「好きなもん、変わりやすいよねー。」
「きっかけさえあれば好きになるよ、全然。」
「嫌いなものは?」
「・・・変わりやすいかも。」
「やだー!私の事嫌いにならないでね?綾音」
「うん、多分ね。心。」
オレの兄弟はなんでもないフリが得意なの。
怪我を隠すのも、感情を隠すのも、本音を隠すのも。
ぜーんぶなんでもないフリして笑ってる。
だから、オレが気づいてあげないと。
なあ?兄弟
なんでもないフリなんて上手になっちゃダメだよ。
心がズキンって痛んで、辛くなるだけだから。
自分に嘘ついて、虚しくなるだけだから。
ねえ、兄ちゃん。こっちに来ないでね。
兄ちゃんには好きに生きて欲しいんだ。
なんでもないフリなんてしないで、自分の思ったままに生きて欲しいの。
笑われたってバカにされたって、辛いものは辛い。
けど、それをなんでもないフリして笑うのは荒治療だよ。
ちゃんと発散しないとね。
好きに生きて、好きに生きたオレからの助言だからね。
だけどね、兄弟。
オレがここにいるってのはなんでもないフリしといて。
オレは、誰の記憶にも残っちゃいけないからさ。
孤独を選んだ気になっていた。
孤高の狼に憧れて・・・
でもね、やっぱね、オレにはアンタが必要なんだ。
仲間が必要なことは知った。
人間は、独りじゃ生きていけないことを知った。
オレは狼じゃないから、人間だから。
仲間が必要なんだ。
だから、オレは・・・アンタが必要なんだ。
なのにさ、なんで・・・
「おまっ、テスト勉強やべーとか言ってたじゃねえかよ!!!!仲間だと信じてたのに!!!」
「ごめんね、ボク要領良いから。」