「なにもいらない」
わかりました。
では私が全てもらいますね。
あなたの
金、家、車、知識、経験、技術、顔、腕、足、内臓、骨、歯、毛、両親、愛する個人、子供、祖父母、ペット、兄弟姉妹、先祖、子孫、生まれた場所、死後の世界、霊体、死因、死ぬ場所、親友、友人、先輩、後輩、上司、推し、愛、その他多くの物
これぐらいですかね。
もしよろしければ下の欄に名前を書いてください。
名前:___________________
え?
なんで私があなたからもらうのかって?
いらないものを貰ってなにが悪いんですか?
必要な物ならいらないとか言っちゃダメですよ
それではさようなら
後ろを見れば憐憫と軽蔑
隣を見れば安心と不安
前を見れば羨望と嫉妬
上と下には道は無い
横と後ろには道はある
停滞と後退という道が
夢は前にしか存在しない
夢を叶えたいのなら
進み続けるしかない
俺は停滞を選ぶ
それが正しいかどうかはわからない
進むべき道を見失ったのかもしれない
だがいずれ前に進めたならばそれで良いと思っている
人は横を見て安心する
トントン
それは近づいたり離れたりする楽しそうな足音
たまにリズミカルに歩いたてきたり
かと思うと突然離れたり
それは突然やってきて突然離れていく
それを私は幸せと呼ぶ
コツコツ
それは一歩一歩確実に踏み出すはっきりとした足音
その歩みは早くなる事は無い
遅くなったり突然立ち止まり
進むことをやめてしまうことだってある
けれどその歩みは戻ることを知らない
それを私は努力と呼ぶ
ひたひた
それはただ近づく静かな足音
その足音が今どこにあるのか決して見えない
それは努力に埋もれ
それは幸せに掻き消される
しかしそれは確実にそこにある
決して避けられない運命
私はそれを…
考えたくない
トラウマが多すぎる
息を呑むほどの絶景
青と白に支配された空
様々な色で地平線の先まで彩られた景色
人工的な断崖から見渡すその景色を目に焼き付けた
後ろにはかつて存在していた村や道路が眠っている
多くの人々はその壁を見にこの場所にやってくる
だが俺は違う
100mほどある壁の上に立ち見回す
犬を連れた夫婦
物見遊山で来た学生
遠くから来た旅行客
その全てを俺は下に見てその場所に立つ
絶景と言われる場所で
壁を流れる水と共に落下する
全てを失った俺には落ちながら思い出される
その全てが美しかった
その場所には誰が植えたでもない彼岸の花が一輪咲いていた