日常の迷路に迷い込んだら
そこは間違い探しの世界だった
何もかもがほんの少しだけ
掛け違っているから
ひとつを正しいと思われる位置に直すと
連動して他のものの位置も
全部変わってしまう
だから本当に一歩ずつしか進めなくて
それすら出来ない日もあって
もう今日は休みだねって寝転んだら
水色の空だけが見えた
雲がぽっかりと浮かんでいて
その隙間を鳥が滑るように飛んでいて
なんでそっちはそんなに平穏なんだって聞いたら
笑ってくれたよ、春。
読み進める小説の
主人公と同化していく
きみは今どこにいる
太陽の動きに合わせて
東の方から西の方へ
当てもなく歩く景色は
永遠に明るい
その強い日差しを受けて
眩しそうに目を細めてる
きみは今どこにいる
(君は今、現実逃避)
ゆっくりでいいんだよ、と
君は言ってくれる
だけどこの時間軸を生きているのは
きっと僕だけだ
みんな別の軸の上にいる
もっと急がなければ
君に追いつけない
だから焦るんだ
とっても焦ってる
(物憂げな空)
畳の匂いが好きだった
使い込まれて黒光りしてる床板も好きだった
大きな掛け時計が一秒一秒を大袈裟に刻んで
たまに重めの音で時を知らせた
開け放たれたサッシから
夏の風は入ってくる
軒先の風鈴をチリンと鳴らして入ってきて
同じく開け放たれた勝手口のドアから
レースののれんを揺らして出ていった
また来るねとも言わずに
(夏の記憶)
壊れたものは元には戻らないから
壊さないよにするのがいちばんだけど
それは不可能なことだ
何年も生きてみて
そんな答えしか出てこない
冬の終わりに絶望的なことを考えて
春に救ってもらおうとしてる
姑息なやり方でも花が咲けば
それでもいいと思ってる
僕の心は醜かった
君はずっと花だったよ
水色の花びらで息をしていた
哀しみを吸い込んでも哀しみにしかならない
だから喜びだけを吸い込めばいいって
そう言ってた
(今日にさよなら)