道草

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9/2/2022, 10:57:35 PM

特別じゃないことほど
なぜか不思議な力を持ってる
くだらない話で盛り上がったり
ただずっと景色を見ていたり
何でもないやり取りも
言葉の少ない時間も

あの頃へ戻れる音楽とか
懐かしい場所へ繋がる匂いとか
記憶と感覚はずっと結びついたまま
どこかの隙間に永久保存され
時々そっと差し出される
そんな感じの思い出に
僕は何度も助けられてきた
これからも

8/31/2022, 11:21:52 PM

いつもの列車が駅から滑り出した
広い川も住宅地も超えて
快速列車は突っ走る
窓の外を猛スピードで飛んでいく景色
それとは逆に
車両の内側に溜まっていく生ぬるい沈黙
不規則な揺れに乗り切れないまま
僕は小さく浮遊して今をやり過ごす
ビルの谷間にある終点で降りると
そこは常に1ミリ先の未来
快速のカプセルで毎日ぎりぎり滑り込んで
時の差を埋めるけれど
いつの日か追いつけなくなるほど
ここは遠い未来になってしまうのかな

8/30/2022, 2:28:49 AM

ざわめいていた町が
真夜中になると静まり返る
みんな眠りに落ちて
起きてるのは僕ときみだけになる
きみが誰なのか僕には分からないけど
とにかくふたりだけが現実で
それ以外はみんな夢だ
僕ときみは怖くなって
どちらからともなく手を繋ぐ
その手のひらの温もりが
だんだん本物のように思えてきて
僕らの心は震え
勝手に泣きはじめる
朝が来て町が現実に戻り
再びざわめきだすよりも前に
泣き止もうとだけ約束した

8/28/2022, 12:30:05 AM

シトシトと降る雨に
尖った音は吸い込まれる
残された優しい音が
手をつないで回り始める
満たされた場所に戻ってくる
何もかも戻ってくる
雨降りの今日
湿った空気は柔軟に
人の気持ちを縁取る
現れた形に気づけるのか
僕は気づけるのか