五月二十四日 櫻井咲希
ガラガラと引く音を立てる点滴。
風通しの良い桃色の服を着ている私。
私、栄養不足で倒れたんだ。
ただ、太りたくないとか、そんな事じゃなくて、只、ご飯を食べることすら面倒くさく感じちゃった。私ね、昔から何事にも関心を持てなくて、将来の夢、好きな食べ物、好きな人、皆皆、どうでも良くて、要らなくて。
だから、私はそんな普通が嫌だったけれど、最近になって、それを持つことを憧れと化して、なのにご飯食べれなくて。そして、私は入院したんだ。ごめんね、まま。こんなにつまらない女の子で。私の名前。希望が咲くようにってつけてくれたんでしょ?私知ってる。ごめんなさい。
こうして私は、近くの公園を歩き回って居た。あー、田んぼの風が心地よい。こんなに晴天なのに、わたしの心は今にでも、猫が顔を洗ってしまいそうだよ。
「テッテレー!君は魔法使いに選ばれました!これは、幸運の持ち主です!大当たり〜!」
私の手を両手で握りしめた、金髪の男性。
なにこれ。新種のナンパ?いや違う!何かほかにあった!あーでも今はそれどころじゃあないよ。
「ど、どういう――」
「つまり、信じて貰えないと思うけど、君は生まれた時から魔法使いなの。そして俺は、魔法使いを見つけだすために、この世界におりてきた、ロボットに過ぎないんだ」
ロボット…?人間そっくり。そして、私は、暇だったし、お話に付き合ってあげよう。そのくらいの軽い気持ちで、言った。
「ふふ、そっか。私の使える魔法は何?」
「君は、灰魔法だ」
はい?灰?!なにそれ、可愛くない!
「な、なにそれ!これみて分からないの、私患者なんだよ。冗談にしては酷いよ」
「冗談じゃない。そして灰魔法は魔法界でも数少ないんだよ」
私に渡してきたのは、黒いルビーの着いた杖だった。確りと凝られている。
「…もういい、私帰ります」
「まって!君のような人材はいない!ほらこっちにおいで!魔法界へ行こう!」――。
私は、行かない!そういう前に、目が覚めると、眠りから冷めた女の子だった。
「…何処ここ」
鏡を見ると見た目は自分のままで。部屋は真っ白な壁に真っ白な床。
「うそ、誘拐?スマホ!あぁある。え、圏外?!」
独り言が煩い。でもそれほど焦っている。久々だなあ。
「お目覚めかな?」
目の前には、さっきまで居なかった猫がいる。え、喋ってるの?
「ね、猫?!喋って――」
「気安く猫と言うな!あぁ、そうさ。なんたってここは、魔法界だからね」
…嘘じゃなかった?嘘だ!夢見たい。私、魔法使い?うれしい。うれしい、うれしいよ!
「…でも、やっぱりやだ」――。
黒猫を刺した。鉄の匂いが飽和する。
「貴様…なんで!」
「…私、何かを殺したかったんだよね。現実ならアリすら殺せない自分だけど、ここは幻日でしょ?私、思ったんだ。ここへ来てまで、ダメな事と、いい事には分けるのはヤダって」
「…ふっ、分かってたよ…、だから俺は…お前を選んだ…これからの魔法界がどう変わるか…楽しみ、だ…」
そして黒猫は力つきた。今気づいたけど、その黒猫は、ロボットで、鉄の匂いのする赤い液体は、現実から持ってきた猫の血だったんだね。
五月二十四日 櫻井咲希
あれから一年経ちました。魔法界。楽しいよ?
あの頃の私へ、今日も今日とて、強い陽射しを浴びながら、黒猫を殺し続ける。
フィクション
好きな小説の書き方を少し真似ました。
お題〈また明日〉
今日は無駄なことを考えてしまいました。
今日は友達があまり話しかけてくれませんでした。
今日は上手く話せませんでした。
今日はやる気が出ませんでした。
今日は、いいことがありませんでした――。
けれど、それでいいと思う。
カエルの鳴き声が響く田舎に暮らす私は、このことさえ、幸せに感じるのです。
もう七時だというのに、明るいですね。
ああ、夏を感じます。
田んぼ道を歩くことを考えるだけで、私は口角が上がります。
今日、あった嫌なことは忘れればいいのです!
明日があるか分からないとか。そんなの考える必要なんてないのです。
今を楽しめば、明日死んでも、後悔などありません。
うーん、こう考えよう!
緑色だった木の葉も、いつかは茶色の木の葉になり、地に落ちます。そして、捨てられてしまうかもしれませんが、捨てられなかった場合は、ダンゴムシの家になったり、寝床になるのです。
だからね。死んでも、死後の世界で役に立つかもしれない。
そう考えれば、今後のことなんてどうでもよく思えちゃう。
今日が無理なら、明日頑張ればいい!明日も無理なら、明後日、1週間後、1ヶ月後、1年後、10年後、何時でもいいのです。
でも私は、今を頑張ります。
そして、今だけじゃあない。また明日も。明後日も。ずっとずっと!人一倍頑張りたい!
お題〈透明〉
ゲコゲコ。
カエルの鳴き声。
私の住んでいるところは、田舎で、虫の鳴き声が窓越しに聞こえる。
あー、鬱陶しい。
でも、夏は好きだ。
スイカ、メロン、扇風機の風、全部が愛おしく感じる。
プールとか、運動音痴には嫌なものだけれど、それよりもっと、良い事が夏には待っているから――。
そんな、大好きな夏の夜。
中学生初の定期テストの、勉強をしていた。
昨日は、2時間頑張った。私はそれで満足していた。
けれど、上には上がいて、1番勉強していた人は4時間も頑張っていたのだ。
帰宅部でも、4時間頑張るのは、きっと寝るのが10時以降になってしまう。
私は、その上を目指そうとはしなかった。
だって、めんどくさいんだもの。
私は私なりに頑張る。そう決めたのだ。
なのに、最近嫌なことを聞いた。
頭のいいあの子は、塾に行っていないこと、1日1時間しか勉強していないこと。
私ね、それを聞いて、一気にやる気が出なくなった。
燃え尽き症候群みたいに。
地頭がいい人なんていないって、噂は嘘なんだよ。
その人が嘘をついているかもしれない。そんなことは無い!
だって、その子はバレーボールを習っていて、塾に行く時間もないし、テキストも最近やっていないらしい。
なんか、情けないや。
でも、私は努力するために生まれてきたんだと思う。
たとえ、透明人間みたいに暮らしている私でも、努力すれば、注目を浴びる。
学年一位に注目がないなんて有り得ないもんね。
私聞いちゃったよ。誰が学年上位になるか、当ててるところ。私の名前なかったね。
テストで毎回いい点とってるつもりなのに。そういう所なんじゃないの?思いやりって。
まあ私もできてないから、何も言えないけど。
私、こんなもの書いてるのも嫌になっちゃった。
早くいい点とって、チヤホヤされたいなあ。
妬まれる人になりたい。
ふと、勉強中に思った。
私は人を妬んでいるけれど、私を妬んでくれている人はいるのだろうか。
いないのならば、妬まれる日が来るのだろうか。
そして、それが長く続くのだろうか。
ああ、手汗が止まらない。
どうしよう。
努力が報われなかったら。
雨の日てるてる坊主を何個も作り、台風が来た時のように。
私の丁寧な努力は報われるのかな?
透明に影が着くだけでもいいから。
影という努力が、周りに映し出されて欲しい。
そんな願望は、届きますか?
お題〈理想のあなた〉
私の理想。
私の理想はこうだ。
みんなに好かれて、自分でも可愛い!って思えるような子。
優しくて、頭が良くて、運動ができて、なんというか。完璧な女の子でいたかった。
私の理想は、全てが欠けていて、だからそれを理想だと言うんだよね。
なんかさ、毎日マッサージにしたり、勉強したり、ダイエットしたり、運動したり、笑顔の練習をしたり、趣味の時間を削ったり、優しい人の特徴とか調べたりさ。私、醜いんだよね。
きっと、みんなが思っている以上に醜いんだよね。
みんなは、『肌白い』『髪下ろすと可愛い』『細い』私の容姿に褒める時、使う言葉はこれだけだよね。意地でも顔が可愛いって言ってくれないのは、ブサイクだからでしょ?
そんな褒め言葉要らないから、顔を褒めて欲しいんだよね。あ、思い出したけど、友達が私の顔をじーっと見つめてる時だって、きっとブスだなって思いながら見ているんだと思う。
可愛くなりたいと思い始めて、約2年。ちっともかわれないんだよね。なんでかな。心の汚さって顔にも出るの?違うよね。じゃあ、可愛くしてよ。1年かけて、美少女に生まれ変わるでもいいからさ、兎に角、死ぬまでには可愛くしてよ。
せめて、鼻が小さくなるだけでいい!
それも無理なら、
涙袋をください!
それもむりなら、
顔を小さくしてください!
それもむりなら、
左右対称の二重にしてください!
それもむりなら、
肌を綺麗にしてください!
それも無理なら、
速急に髪を伸ばしてください!
それも無理なら、
まつ毛を長くしてください!
それも無理なら、
目を大きくしてください!
それも無理なら、無理なら――。
なんだ、やっぱり醜いや。
じゃあ、私のいいパーツを見てみよう。
口角が笑わなくても上がってるね。
二重だね。
おでこが狭いね。
肌が白いね。
上半身だけでも細いね。
鼻が高いね。
歯並びがいいね。
蒙古襞が無いね。
最近、ストレッチで涙袋ができてきたね。
口ゴボじゃないね。
丁度いい唇のうすさだね。
うーん、やだなあ。ダメな点の半分にも達さないよ。
じゃあ、努力してることは?
涙袋を作るためにストレッチ頑張ってるね。
ダイエット中なのに、家族からのスイーツのプレゼントは、4分の1だけ食べてるね。
そして、その後、運動してるね。
面倒臭いのに、ドライヤー前と後には、冷風を当ててるね。
ヘアオイル、面倒臭いけどつけてるね。
アイロン毎朝頑張ってるね。
可愛い子見ると病むけど、可愛くなるために見れてるね。
ストレッチ頑張ってるね。
もっともっとあるけど、でも。
何も変わらないんだよね。
あなたの理想は何ですか?私の理想は結局、可愛くなる、このひとつなのです!
定期テストがあります。
お題〈真夜中〉
私、小説が好きなの。
性格も、顔も、スタイルも、全部全部が嫌いだけどね。小説を読んでいると、どこかのお姫様にれた気分になれる。
そんな私が、真夜中に小説を読んでいて、ふと思うんだよね。
私、みんなの記憶に残るような子なのかな。
きっと、先生はこういうと思うんだよね。
『成績は特別いい子じゃない。そして、面白みがなくて、積極性のない子。でも、大きな問題は起こさない。いつも10分前には学校に着いている、規則正しい子』
私、取り柄ないんだよね。
まだ入学したばかりだけど、やっぱり思っちゃうよ。
私、このまま行くと、私が考える先生の言葉を、言われてしまうと思うと、怖いよ。
だってさ、皆はひとつくらい印象に残ることがあると思うんだよね。
大きな悩みを抱えていて、よく相談してくる子。成績優秀の子。おバカな子。問題児。面白い子。皆の中心にいる子。KーPOPアイドルが好きな子。可愛い子。おちゃらけてる子。人一倍部活を頑張ってる子。休んだことない子。不登校。別室登校。我儘な子。ひとつはあると思うの。
でも、私には何があるかな。
悩みを言葉に表せないし、成績も特別良い訳じゃないし、面白キャラじゃないし、規則は守ってるし、皆の中心にいないし、アイドルとか興味無いし、可愛くないし、スタイル良くないし、週に一回は休むし、不登校でも、別室登校でもないし、部活入ってないし、委員会入ってないし、授業中、手、上げないし。
んー、何があるのかな。
小説が好きなこと?でも、みんなの前ではあんまり読まないなあ。
あれ、本当に何一つないじゃん。
まだ入学して2ヶ月も経ってないのに、こんなことを考えてしまう。
私はただ、誰かの記憶に残りたいだけなんだ。
でも、残りたいのに。残るためのことは何一つしてない。
そのくらい私は人に興味が無いんだから、誰かの心に残りたいだとか、好かれたいとか思っちゃダメなのかな。
明日、土曜日だね。
この前買った小説、もうすぐで届くの楽しみだなあ。
それに、可愛い髪型で学校行くの想像するの楽しいなあ。
友達と話したいなあ。
美味しい給食が待ってるんだね。
みんなに可愛いって思ってもらえてる妄想するのも楽しい!
火曜日から読書タイムで新しい小説読める!
今日、細すぎてうざいって言われて嬉しかった!
肌白いってよく言われる!
髪下ろしたら可愛いって言われる!
んー!なんて幸せなんだろう!
私、幸せじゃん!――。
でも、やっぱり。
取り柄がないのには変わりはないんだよね。
だからこそ、私は可愛くなりたい、頭良くなりたい、みんなに好かれたい、取り柄が欲しい、やさしくなりたい、幸せにいきたい!そんな私は毎日努力するんだ。
努力してるだけでかわいいとか、偉いとか、好きだよーとか、そんな言葉要らないから。
みんなに好かれてるあの子も、頭のイイあの子もみんなみんな嫌いだから。
だから。
よく分からない!昨日のお題は思いつかなかった!