12歳の叫び

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五月二十四日 櫻井咲希
ガラガラと引く音を立てる点滴。
風通しの良い桃色の服を着ている私。
私、栄養不足で倒れたんだ。
ただ、太りたくないとか、そんな事じゃなくて、只、ご飯を食べることすら面倒くさく感じちゃった。私ね、昔から何事にも関心を持てなくて、将来の夢、好きな食べ物、好きな人、皆皆、どうでも良くて、要らなくて。
だから、私はそんな普通が嫌だったけれど、最近になって、それを持つことを憧れと化して、なのにご飯食べれなくて。そして、私は入院したんだ。ごめんね、まま。こんなにつまらない女の子で。私の名前。希望が咲くようにってつけてくれたんでしょ?私知ってる。ごめんなさい。
こうして私は、近くの公園を歩き回って居た。あー、田んぼの風が心地よい。こんなに晴天なのに、わたしの心は今にでも、猫が顔を洗ってしまいそうだよ。
「テッテレー!君は魔法使いに選ばれました!これは、幸運の持ち主です!大当たり〜!」
私の手を両手で握りしめた、金髪の男性。
なにこれ。新種のナンパ?いや違う!何かほかにあった!あーでも今はそれどころじゃあないよ。
「ど、どういう――」
「つまり、信じて貰えないと思うけど、君は生まれた時から魔法使いなの。そして俺は、魔法使いを見つけだすために、この世界におりてきた、ロボットに過ぎないんだ」
ロボット…?人間そっくり。そして、私は、暇だったし、お話に付き合ってあげよう。そのくらいの軽い気持ちで、言った。
「ふふ、そっか。私の使える魔法は何?」
「君は、灰魔法だ」
はい?灰?!なにそれ、可愛くない!
「な、なにそれ!これみて分からないの、私患者なんだよ。冗談にしては酷いよ」
「冗談じゃない。そして灰魔法は魔法界でも数少ないんだよ」
私に渡してきたのは、黒いルビーの着いた杖だった。確りと凝られている。
「…もういい、私帰ります」
「まって!君のような人材はいない!ほらこっちにおいで!魔法界へ行こう!」――。
私は、行かない!そういう前に、目が覚めると、眠りから冷めた女の子だった。
「…何処ここ」
鏡を見ると見た目は自分のままで。部屋は真っ白な壁に真っ白な床。
「うそ、誘拐?スマホ!あぁある。え、圏外?!」
独り言が煩い。でもそれほど焦っている。久々だなあ。
「お目覚めかな?」
目の前には、さっきまで居なかった猫がいる。え、喋ってるの?
「ね、猫?!喋って――」
「気安く猫と言うな!あぁ、そうさ。なんたってここは、魔法界だからね」
…嘘じゃなかった?嘘だ!夢見たい。私、魔法使い?うれしい。うれしい、うれしいよ!
「…でも、やっぱりやだ」――。
黒猫を刺した。鉄の匂いが飽和する。
「貴様…なんで!」
「…私、何かを殺したかったんだよね。現実ならアリすら殺せない自分だけど、ここは幻日でしょ?私、思ったんだ。ここへ来てまで、ダメな事と、いい事には分けるのはヤダって」
「…ふっ、分かってたよ…、だから俺は…お前を選んだ…これからの魔法界がどう変わるか…楽しみ、だ…」
そして黒猫は力つきた。今気づいたけど、その黒猫は、ロボットで、鉄の匂いのする赤い液体は、現実から持ってきた猫の血だったんだね。
五月二十四日 櫻井咲希
あれから一年経ちました。魔法界。楽しいよ?
あの頃の私へ、今日も今日とて、強い陽射しを浴びながら、黒猫を殺し続ける。



フィクション
好きな小説の書き方を少し真似ました。

5/24/2024, 10:49:32 AM