お題〈モンシロチョウ〉
可愛くない。
可愛くない太陽の日差しが私を殺す。
朝、学校へ行くため、自転車をこぐが、どうにもいけ好かない。
あーあ、学校なんて燃えて、無くなっちゃえばいいのに!――。
田んぼに落ちた。
丁度、水張りが始まった頃だったのに。
もう!せっかくの制服が泥でびちょびちょ。
でも、こうなったのは、あの三毛猫のせいだ。
三毛猫と言っても、本当は白い猫で、その白い猫は、バス停の屋根の下でお昼寝をしていたんだ。
白い綺麗な毛には、所々に茶色い泥が付いていて、それがどうにも三毛猫に見えたのだ。
それはそれは、私の理想とする可愛いだったから、つい見とれていた。
ほんと、まるで死神みたいね。
じっと自らの意思で見ていた訳でもないのに、いつの間にか見とれていたんだ。
私は、田んぼに落ちて座ったまま、死神を見て
「あーあ、私はああいう人になりたいのに。きっとあの死神様は、みんなに好かれてるんだろうなあ」
独り言を呟いた。
そうだ。きっとあの死神様は、みんなに好かれていて、大人しい子なんだろうなあ。と思った――。
嗚呼もう!そんなこと考えている場合じゃないのに!
早く、自転車を起こさないと、そう思ったのにまた私を不細工にする――。
だって、サドルに泥が着いていたんだもの。さっそくサドルに足をまたごうとしたのに、このザマです!もう帰ろうかな――。
にゃー、にゃー。
私の元へ顔をスリスリしてきた猫は、死神様じゃなかった。
茶色い毛の色をした、茶トラ猫だ。
確か、人懐っこい猫のイメージは茶トラ猫だったなあ。
「ふふ、猫ちゃんどうしたの?ごめんねー、私早く行かないと遅刻しちゃうよ」
「にゃー、にゃー」
次は、私の手を舐めた。
私の味方は茶トラ猫。貴方だけだよ――。
「あ、もう八時半…。ホームルーム始まっちゃってるよ…。猫ちゃん、もう行くね 」
私が、自転車を起こし、サドルを拭いたあと、サドルを足で跨ごうとした。その時。
「にゃー!にゃー!」
私のスカートを噛み、私を引っ張る――。
ガシャンッ
自転車のハンドルを掴んでいた私は、体制を崩し、自転車を倒した。
「はぁー?もう!最悪じゃん!」
田んぼと田んぼの間の一本道のど真ん中で、私は叫ぶ。
だって!このバカ猫が、自転車を倒したんだもの!倒したのは私だけど、こうしたのはこのバカ猫でしょ?
あーもう!最悪。ちょっとは可愛いなあって思ってたのに。
もういい。こんなバカ猫いらないよ。さっきの死神様でも見て、心を落ち着かせ…――。
ムシャムシャ
モンシロチョウを食べていた。
咀嚼音がはっきり聞こえた。
猫が蝶を食べる…?そんなの見た事ないよ。
私は、見慣れない光景に驚き、スマホを開き、検索を掛けた。
――猫 モンシロチョウ 食べる
調べてみると、食べる猫もいるらしいが、あまり体に良くない。
でも、私の驚きは、グロいーとか、珍しいーとか、そんな簡単なものではなくて。
あんなに可愛い猫が、醜怪な行動を取るということに驚いた。
うーん、でもよくよく考えてみれば、みんなから好かれている子も、皆が可笑しいと思う行動をとることもあるし、さっきの死神様を思い出したけど、ずっと寝ていたのはモンシロチョウを呼び出すためかもしれなくて、ずる賢いところもある…。
まあ、私が言いたいのは要するに、ずる賢い子は、この汚い世界で上手く生きていけるってこと!ルールに縛られて、嫌〜な大人にしたがってばっかな必要は無いの。
そんなこといったって、簡単に休めるわけもないけど、でもね、私は休む、サボるよ?
なんかこんなこと考えてて、馬鹿らしいや。
あんな先輩の居る部活も、退部届出さないとね、あ、それに、今日はダイエット中だけどアイスも買っちゃうんだから!
ありがとう、茶トラ猫。
ありがとう、死神様。
ありがとう、モンシロチョウ。
フィクションです。(小説 初心者)
彼の匂い。
彼の声。
彼の顔
彼の仕草
彼の優しいところ。
全部、全部、私は覚えている。
忘れられないんだよ。いつまでもね。
それなのに、
そうだというのに、
彼は、私の事はひとつも覚えていない。
あの日から丁度十年経つというのに、私は忘れられない。
忘れたくないのだ。
だって、私達、まだやって行ける気がしているんだもの。
あんな別れ方なんて酷いよ。
私、まだ認めてないんだからね。
私を裏切ったことも。
私を嫌ったことも。
私は、あなたのためを思ってしたんだよ?
貴方が言ったんでしょ?
『君を愛せる自信がないんだ。俺は、君といると気が狂うんだ』ってね。
忘れたなんて言わないよね?言わせないからね?
だからだよ、分かるよね。私があなたの不安を無くすためにやったことだってことを。
だから、だから、私はあなたの役に立ったのだから、貴方もそのお返しをしてよ。
私が幸せになれるお返しを。
あれ、何も言わないけど、思いつかないの?じゃあ、私が望むものを教えてあげるよ。
私は、貴方とまた話したいよ。
私、あなたを殺してしまったことを後悔している。つい、歓喜余ってしたことなんだよ。
ただ、貴方と暖かい家庭を築いて、生涯を終えたいんだと、説得したかっただけなの。
なのに、貴方が、あなたの都合で別れたいだなんて言うから。
だから殺したの。
ねえ、分かったよね?
死んでも私から逃げられないよ。
私は、貴方を追って死なないし、1人で最後まで生きるよ。
でもね、あなたを忘れない。あなたの好きなものも全部、メモしたんだからね。
1日経てば忘れちゃうけど、メモを見れば思い出せるもの。
私の愛は、これだけだったんだよ。
フィクション(小説、初心者です)