12歳の叫び

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彼の匂い。
彼の声。
彼の顔
彼の仕草
彼の優しいところ。
全部、全部、私は覚えている。
忘れられないんだよ。いつまでもね。
それなのに、
そうだというのに、
彼は、私の事はひとつも覚えていない。
あの日から丁度十年経つというのに、私は忘れられない。
忘れたくないのだ。
だって、私達、まだやって行ける気がしているんだもの。
あんな別れ方なんて酷いよ。
私、まだ認めてないんだからね。
私を裏切ったことも。
私を嫌ったことも。
私は、あなたのためを思ってしたんだよ?
貴方が言ったんでしょ?
『君を愛せる自信がないんだ。俺は、君といると気が狂うんだ』ってね。
忘れたなんて言わないよね?言わせないからね?
だからだよ、分かるよね。私があなたの不安を無くすためにやったことだってことを。
だから、だから、私はあなたの役に立ったのだから、貴方もそのお返しをしてよ。
私が幸せになれるお返しを。
あれ、何も言わないけど、思いつかないの?じゃあ、私が望むものを教えてあげるよ。
私は、貴方とまた話したいよ。
私、あなたを殺してしまったことを後悔している。つい、歓喜余ってしたことなんだよ。
ただ、貴方と暖かい家庭を築いて、生涯を終えたいんだと、説得したかっただけなの。
なのに、貴方が、あなたの都合で別れたいだなんて言うから。
だから殺したの。
ねえ、分かったよね?
死んでも私から逃げられないよ。
私は、貴方を追って死なないし、1人で最後まで生きるよ。
でもね、あなたを忘れない。あなたの好きなものも全部、メモしたんだからね。
1日経てば忘れちゃうけど、メモを見れば思い出せるもの。
私の愛は、これだけだったんだよ。

フィクション(小説、初心者です)

5/9/2024, 1:26:51 PM