NoName

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8/2/2022, 4:10:49 PM

目が覚めると、知らない天井が真っ先に見えた。
なんとなく頭が痛い。

(ここは…病室?)

ズキズキとした痛みの中でぼんやりそう思った。
そういえば、どこからかアルコールの臭いがする。

(俺は一体何でこんな所に?)

最後の記憶では確か自宅のベッドに身を沈めたはず──夜中に喉が渇いて起きた記憶はあるが、外に出た記憶はない。

横たわったまま左に視線をやると大きな窓がある。
そこから見える景色は雲のひとつもない快晴だ。
空が見えるだけで周りの建物等は目に入らない、随分高い場所にある病室だな。
窓以外全て白い壁を眺めながら、ここはどこなのか、何故自分はここに居るのかを考えてみる。
が、情報が少なすぎて何も思い当たらない。


状況が分からないばかりなのはどうにも気持ちが悪い。
身を起こそうと腹筋に力を入れると頭の痛みが一際増し、思わず呻きながら頭を抱えてしまった。

「うっ………ったく、何なんだよ……」

呻きながら目の届く範囲を見回してみるが、どうにもものが少ない──というか、俺が寝ているベッド以外にものがほとんどない。
随分前に個室で入院した事があるが、ナースコールや袖机のような棚などがあったように思う。

待てよ……?
ナースコールが無いとしたらどうやって医者を呼べば良いんだ?

酷く痛む頭痛の他に悩みが出来てしまった。

この後また別の問題にぶつかり、あんな事件に巻き込まれるだなんて…この時の俺は予想もしていなかった。

次回「ナースセンターに潜んだ殺人鬼」
一生続きません。

8/2/2022, 8:27:19 AM

「明日、もし晴れたら」

君がそう言った桜の下。
その後の言葉を春風が連れ去ってしまった。

あの時、僕に聞き返す勇気があれば……
もう少し早く君の隣に居られたのかな。

そう問い掛けてみると、君はあの時の桜のように頬を染めてしまった。

「明日、もし晴れたら……」

いつもより悪戯っぽく君が口を開く。

「どこで何をするにも君と一緒なら」

開けた窓から風が入り、ひらりと桃色のカーテンが揺れた。