盲目的恋愛衝動もここまで来ると一種の芸術よな。そこに広がる奇勝 はきっと僕の目には映らない。
今関わっている人たちはみな天文学的な確率での巡り逢いによるもの。別にだから何だという話ではあるのだが、そう考えてみると少し人生をフィクションとして捉えれるような気がする。
芭蕉が行脚した際に定めた諸々の規律を読むと、旅について人がどう向き合うべきか分かる。太宰の津軽を読めば、物書きが郷土について語る時の向き合い方が読み取れる。
文芸に秀でたものが、様々な土地を巡り、そこでの経験や知り得た歴史などを勿体ぶらず書き残してくれるのは、実際とても助かることである。
鳥というのは本当に良い。整った顔に愛らしいフォルムは誰もを魅了する。声なんかはどの生物より美しいとさえ言えるだろう。
「なあ、あれを俺の耳元で囁いてくれよ」
「はぁ?なんであんたなんかの為にそんな気色の悪いことしなきゃいけないのよ」
「少しだけでいいんだ。なぁ良いだろ?」
「どうしてもして欲しいなら、そういうサービスを頼めばいいじゃない」
「なんつーか、そいつは違うんだ。それはあまりにも形式的すぎる。俺が金を出す、相手はそれを受け取り売買契約は成立する。そこにはレシートや領収書があり、クーリングオフ制度なんてのもあるかもしれない。まあ、つまりそれはあまりにも他人行儀じゃないか?」
「そんなの知らないわ。私が言ってるのはその気色悪い要望を私にぶつけないでと言っているの。そういうサービスが嫌なら、個人間の取引にすればいいじゃない。インターネットが張り巡らされている現代でならやりようはいくらでもあるでしょう」
「インターネットか、確かにありかもしれない。SNSって奴だな?」
「そうよ。そこでならそういう非形式的な交遊もできるんじゃないかしら」
「そうだな、そんな気がしてきた。早速やってみるか」