頑張って生きる一般人さん。

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5/29/2024, 4:08:24 PM

そんな言葉、聞きたくない
「ごめんね」なんて、聞きたくない

私のプリン食べたから、
皿洗いとか洗濯とか面倒臭いから、
他の女と一緒にいたから

「ごめんね」、そんなんじゃ済まない
最後なんて、
特に。

……でも、私も私
こんな奴に惚れたんだから
こんなろくでもない。
だから、

「ありがとう」の一言くらい、いいじゃない

〜「ごめんね」〜

5/18/2024, 11:39:10 AM

 どこまでも澄み渡る青に、キラキラ輝く太陽。今日は絶好のお散歩日和! ということで僕たちは家族で近くの公園まで遊びに来ていた。休日ということもあり、子連れの親子がたくさんいる。僕たちはお昼ご飯も兼ねて、空いているベンチに座って、今朝作ったおにぎりを食べ始めた。
「今日晴れて良かったな」
「うん、そうだね。特に肌寒くもないし、ちょうどいい天気だよね」
「んっ! まぁま、このおにぎり、おいちぃ」
 僕の膝の上に座っている愛おしい我が子は、嬉しそうに足をバタバタさせた。そしてまたもう一口、もう一口と少しずつ食べ進めては、美味しそうに顔を綻ばせる。僕たち二人はその様子を見て、思わず笑ってしまった。しばらくしてご飯を食べ終わり、談笑していると、息子が何かを発見したように指を指した。
「ぱぁぱ、まぁま! にゃんにゃんいるぅ」
「ん……? あ、ほんとだね」
 公園の端の方に立っている大樹。その下に丸くなっている猫がいた。息子は目を輝かせて、キャッキャとはしゃぎ出した。そして「みたい、みたい!」と興味津々に何度も繰り返した。僕と彼は顔を見合わせて頷き、猫を刺激しない程度まで近づき屈んだ。近くで見てみると、毛並みが綺麗に整っているのが分かる。それから、すやすやと気持ちよさように寝ていた。僕は小声で我が子に話しかける。
「……ねこさん、ねんねしてるね」
「うんっ、ねんねしてる……しーするっ。あっちであそぶ〜」
 人差し指を口元へ持っていき、もう一度静かにしーっと声を出した後、小さな手で、ばいばいと手を振った。そしてくるりと後ろを向いてよちよちと向こうへ歩き出した。僕たちも追いかけようとした時、ピクリと黒猫の体が動いたのに気づく。ゆらりとしっぽをひと振りし、ゆっくりと体を起こした。くしくしと顔を擦ったあと、軽やかに鳴き声を上げた。
「わ、ねこさん、起きたよー……って、もう二人とも向こうの原っぱの方行ってるのか」
 子供が地面に生えている草花を見て手を叩き、彼は穏やかな顔つきでそれを見つめていた。それを見て自分も微笑ましくなる。僕もそっちへ向かおうと立ち上がった。だが意外にも怖がっていないのか、僕の足元に猫が擦り寄ってきた。遊んでほしそうに、構ってほしそうに甘えた声で鳴いてくる。金色の瞳が一直線に僕のことを見上げて、脚に尻尾までゆるく巻き付けてくる。何だか謎に惹き込まれる感じがして、その姿から思い浮かぶのは、彼としてる時――って! なんてことを考えているんだ僕は! 思い切り頭を振り、改めてこの子に向き合った。少し戸惑いつつも、再びしゃがみこみ、ゆったりと微笑んだ。
「僕でよかったら、一緒に遊ぼっか」

 それからほんの一時、僕はこの黒猫と戯れていた。ねこじゃらしを使ったり、木陰から出て日向ぼっこをしたり。何だかんだで僕も一緒に楽しんでいると、急に猫は僕の横を通り過ぎて行った。軽快にステップを踏むような足取りで。
「あ、あれ? どこに行くの?」
 呼んでも足は止まらない。僕はそのあとを付いていくように歩みを進める。案内された場所は二人がいる原っぱ。息子はどこかソワソワしている様子で手を後ろに組んでいる。一方で彼は優しい眼差しで見守っている。僕は不思議に思って二人を交互に見つめていると、彼がひょいっと子供を抱きかかえて、「ほら」と小さく囁いた。その瞬間、ちらりと手から覗かせたもの。それは。
「……まぁま! いつも、ありがとっ! だいちゅきっ!」
 子供の温かな言葉と共に渡されたのは、シロツメクサの花冠と、控えめなたんぽぽの花束だった。驚きと感動のあまり呆気にとられていると、今度は彼が僕の頬にキスしてきた。先程の驚きと感動に、羞恥心がプラスされる。色んな感情が混ざり、一気に顔が火照っていくのを感じる。
「へっ……!? ちょ、なにっ……!?」
「ふふ、サプライズ成功だな」
「やったぁー!」
 二人は嬉しそうに笑い、息子に至っては手を鳴らして大はしゃぎしていた。僕は未だに状況を飲み込めないでいると、彼は楽しそうに話し始めた。
「俺がここに咲いてる花見せてた時にさ、『まぁまにこれ、プレゼントしたい』って、熱心に言ってたんだよ。この花束は子供から、冠は俺からだよ。全ての花を厳選したのはこの子。ちょうど猫と戯れていたから……サプライズってことで、日頃の感謝の意味も込めて、な?」
「きゃは! まぁまにも、ぱぁぱにもちゅー!」
 息子が元気よくそう言うと、彼は反対側に回り、逆頬の方にキスさせた。どくん、どくんと心臓が跳ね上がる。自分の心が幸せで満たされていくのを感じる。ポカポカと体の奥底がふんわりと温かくなってくる。僕も伝えたい。言葉にして。
 ――こちらこそありがとう。これからも、よろしくね。

〜(別のお題です)/オメガバース〜

5/7/2024, 12:22:30 PM

得体の知れない甘酸っぱい果実
口に入れたら酷いくらい甘くて
噛むと苦味と酸味が襲いかかる
喉元過ぎても嫌な味は漂ってる
そんな一日があった

得体の知れない感情は少しして崩れ去った
たくさんお話して目で追うまでは甘かった
だけど君には大切な人がいるって分かった
突如重い苦味と強烈な酸味が僕を苦しめる
そんな時もあった

でも今は、

毎日が満ち足りるくらい幸せなんだ――!!
とろトロに蕩けきった君の甘美なる顔
そこに苦ミも酸ミも全クない
骨の髄まで愛してアイシテ愛情をたっぷり注いで
「相思相愛」、ハッピーエンド



……って、ことにしておいてくれ。

~初恋の日~

5/1/2024, 11:46:30 PM

透明なな空間が
鮮やかな虹色に染まる瞬間

あたしは、
ちょっぴり
いやになった

見えない色が見えてくるのは楽しいこと
でも
見えない方がいいことだってある

純粋無垢な
何も知らない方が

幸せだってことも
ある

〜カラフル〜

4/20/2024, 9:27:16 AM

「蒼葉さん!」
「……ん」
 今日も何事もなく迎えられた朝。愛おしい人の温もり が隣に、声がすぐそばにある。そんな幸せを噛み締めな がら、俺は気怠げに瞼を開いて上体を起こす。昨日のク リアのがっつきようと言ったら。昨日の出来事を表すよ うに、身体のあちこちにはたくさんの痕があった。
 俺はグッと伸びをして、まだ寝ぼけ眼でクリアを捉え た。その横顔はとても悲しそうだった。寂しげに目が伏せ られて、今にも泣き出しそうに唇をかみ締めている。そんな表情を痛いほど見てきた俺は、瞬時 に目を開いてそっと背中をさする。
「クリア、お前またどこか具合が――」
「……雨が、大雨が降ってますよぉ、蒼葉さん〜……」
 クリアは窓の方を指さし、めそめそと泣き出した。俺も窓の方に目をやると、確かに大雨が降っていた。空はどんよりと暗く曇っていた。
 そうだ。昨日テレビで天気予報を確認した時、晴れになると言っていたから、散歩とかピクニックでもしに行くかって話をしていた。クリアは透き通った淡いピンク色の瞳を輝かせて、元気な子犬のような明るい笑みを浮かべていた。心から嬉しそうに。だが今日は突然の雨。嘘をつくんじゃない、なんて言いたかったけど、天候はコロコロ変わるものだ。仕方がない。とりあえず、クリア自体に何事もなくて安心した。俺は再びクリアの背中をさすりながら、諭すように話した。
「今日は出かけるの、やめるか。家でまったり過ごしていよう。天気のいい日に改めて行こう」
「うぅ……はい……」
 俺はクリアの肩を抱き寄せて、布団の上に置かれていた手に、自分の手を重ねた。ほんのり温かい、クリアの体温。実際にここに存在しているんだと改めて実感する。そして、自分よりも少し大きい手の甲。俺はその骨格を撫でるように、指一本一本に絡める。
「蒼葉、さん?」
「ん……、あぁいや、何でもない。さてと、今日はバイトもないし、飯食ってからもう一眠りするか」
「……はい。蒼葉さんがそうするなら、僕もそうします」
 クリアは手の甲を翻して、再び握りしめた。そして俺の方を見て、穏やかに微笑んできた。心をやんわりと包んでくれる、わたあめのように甘い笑み。さっきまでの表情はどこかへ消えていた。俺も釣られてはにかんで笑うと、ベッドを抜け出し、服に袖を通した。それから一緒に下の階へ降りる。少しでも長く一緒にいられることに、幸せを感じながら。

 それから日中はゴロゴロ過ごして、何だかんだでお昼の時間になった。クリアと過ごす時間はあっという間だな、なんてベッドに腰掛けて切なく思っていた時。「蒼葉さん!」と、明るく呼びかける声が聞こえてきた。声のした方に顔を上げると、クリアは花が咲いたような笑顔で俺を見つめていた。
「雨、止みましたよ! 黒い雲は一つも見つかりません。晴れています!」
「ん……? あ、本当だな。一旦ベランダ出るか」
「はい!」
 ……なんだろう。見えないはずの子犬のしっぽが、なんだか今は見えるような気がする。それもブンブン勢いよく振りまくってるような。ソワソワしているクリアの様子に俺は少し笑ってから、一緒にベランダへ出た。雨が降った後特有の湿っぽい空気が肌を撫ぜる。だけど空には青が見えていた。もくもくと浮かんでいる雲の隙間からは、太陽の輝かしい光が差し込んでいた。この空模様を見て、ふと思った。いや、俺も午前中からずっと思っていたのかもしれない。同時に顔を見合せ、はにかみ、笑みを浮かべながら声を発していた。
「出かけるか、クリア」
「出かけましょう! 蒼葉さん」

 昼食ついでに、と俺たちは家の外へ出た。所々には水たまりがあり、日光を受けてキラキラと煌めいていた。晴れて良かった、なんて思いながら空を見上げていた時。急に視界がビニール状のもので覆われた。傘だ。ポケットから出てくるビニール傘。突然の行動に驚き、チラリとクリアの方を見る。バッチリ視線が重なると、クリアはふっと口角を上げた。
「また雨が降ってきても、蒼葉さんの身体が濡れないようにするためです。雨に濡れて風邪をひかないようにするためにも」
「……そっか。ありがとな」
 クリアの気遣いに心にじんわりと染み渡る。俺も軽く笑んで感謝の言葉を伝え、ゆっくりと歩みを進めた。右隣からはそっと歌が聞こえてくる。クラゲの歌。優しくて柔らかな歌声。俺を救ってくれた歌、再会の歌。心地の良い癒しのメロディに耳を傾けながら、行く先を見つめる。右耳の聴力と、右目の視力を失っても、俺が代わりになってそばで支えて寄り添っていく。人間だとか、機械だとか関係ない。お互いが愛し合っている気持ちがあれば十分。口内から自然と愛が溢れ出す。
「……クリア、大好きだよ」
「蒼葉さん……はい、僕も蒼葉さんのことが大好きです」
 一度歩みを止めて、どちらともなく口付けを交わした。握られた手から、触れられた唇から、互いの熱が混じり合っていくのを感じる。いつの間にか空はカラリと晴れていた。午前中までの雨が嘘のように。そして正面には、俺たちを繋ぐように大きな虹がかかっていた。
 共に想いを発して、紡いで、溶け込んで。何気なくても、幸福がいっぱいに詰まった今日を大切に過ごす。明日も明後日もその先も。本当にまた出逢えて良かった。これからもずっと、そばに。

――夢みる クラゲは 歌 かなで
キラキラ かがやく
声は ただ揺れ あなたへと……

〜(違うお題失礼します)〜

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