いつかの話。
生まれながらにして、片目が金色の瞳をした女の子がいた。
その子は『珍しい』という、たった一言の理由で蝶よ花よと大切に育てられてきた。
だが、成長するにつれて、瞳は金から黒へと変わる。
その瞬間から、人々は途端に彼女へ興味を示さなくなった。
『普通の人間と変わらないから』って。
〜蝶よ花よ〜
そうだ、全部最初から決まってたんだ。
この年に生まれて、
この年で保育園、小学校、中学校、高校、
ここで働く
あの人と結ばれる、
そして、この年で死んで、
全ては定まっていたこと。
私なんかの手じゃ、到底届かないようなところで、高みの見物をしている人物が。
……運命。変えられるもんなら、変えたい。
〜最初から決まってた〜
君が月なら、僕は太陽みたいな存在だろう。
いつも明るくて、元気で、活発で。
遮る雲がなかったら、いつでも君を照らし続けることが出来る。
今日も僕は君の隣を歩く。
どうやら、嫌なことがあったらしい。
でも、大丈夫。
僕がずっと君のそばで、元気付けるから。
輝き続けるから。
〜太陽〜
「ね、今日このあと暇?」
「別に……特に何も無いけど」
「お!じゃあ、今から駅前のスイーツ屋さん行こ!!新作の桃パフェが出たんだって〜」
放課後。終わりのチャイムがなる。私は、高校から仲良くなったマキからそう声をかけられた。正直に言えば、苦手なタイプの子。いつも元気でテンションが高くて、色んな人から囲まれて、自身から積極的に話しかけていく感じで。だから、一年の頃、初めて会った日は「あ、この人無理だな」と、本能で悟っていた。
だけど、そんなイメージは覆る。高校二年の夏。学校の帰り。私は見た。たくさんの子どもたちがいる公園で、彼女が羽を怪我をしている小鳥を拾い上げている姿を。
「……今、治してあげるからね」
どうやって、とツッコミたくなったけど、あえて何も言わず、ただ黙ってその様子を見ていた。すると彼女は突然立ち上がり、スゥと息を吸った。そして次の瞬間、私はハッと息を飲んだ。
――歌い出したのだ。
大勢の人がいる中で、彼女は美声を放った。何の歌かは知らない。だけど、心の底から何かが湧き上がってくるような心地になった。本当に、感動したかもしれない。歌いきった後の清々しい表情に、公園の利用者の拍手、そして、パタパタと羽を動かしていた小鳥の姿。この光景は今でも忘れられない。
「ん?おーい、どうしたの?ボーッとして」
「あ、いや別に何も……」
「そっか。じゃ行こ!しゅっぱーつ、しんこーう!!」
彼女は走り出す。私にキラキラとした笑顔を見せつけて。そんな私は、息をついてから笑った。そして、ゆっくりとその後をついていく。私たちの間に、終わりの鐘の音が鳴り響くことがなければいいのに、と心の中で願いながら。
〜鐘の音〜
今がつまらないって思っていても、
ずっと続けていれば、
楽しいに変わるかもしれない。
ひとりじゃつまらないって思っていても、
みんなと一緒にいれば、
楽しいに変わるかもしれない。
何もかもがつまらないって思っていても、
これから先が、
超楽しいに変わるかもしれない。
〜つまらないことでも〜