「じゃあな」
いつものように冷静で、淡々とした声で告げる彼。
「うん、またね」
いつもよりもちょっぴり寂しさが混じってしまう私。
幼なじみである彼から言われた、唐突の引越し。
場所は、今いる辺鄙な田舎なんかじゃなくて、建物がいっぱいの都会の方。
簡単に会える距離では無い。
……今日は最後の日なのに。
「大好きだよ」って、彼に言えなかった。
〜突然の別れ〜
胸の奥がキュンキュンして甘酸っぱくて、でも、ちょっとほろ苦くて……
The青春!って感じの恋をしてみたい!
いやまぁ、恋してるにはしてるんだけど……
もうほんっと苦い!苦すぎる!!
気になってるあの子は、いっつも素っ気ない態度してるし、
だから私も、トゲのあるような言葉になるし……
こう、二人の距離が全然いい感じに縮まらない。
あーもう!
早く私をあなただけのものにしてよ!!
〜恋物語〜
辺りが静まり返った真夜中。
私は違う自分へと、姿を変える。
『優等生』から『ネトゲ女』へ。
真の姿は後者の方。
勉強なんて大っ嫌いだ。
偉い子ぶるのも疲れに疲れる。
束縛されて生きる人生なんて楽しくないから、私は逃げることを選ぶ。
いわゆる、現実逃避。
今日も夜な夜なこっそりと画面越しの空間へ入ってゆくんだ。
〜真夜中〜
「愛?そんなもの、とうの昔に置いてきてしまったよ」
一人の魔女が薄らと目を細めて言う。対面に座っていた客人は驚いたように目を見開いたが、すぐにもとの顔に戻った。
「いやいや……北の魔女さん、あなたは愛にまつわる魔法が得意だったのでは?」
「あー……はいはい、確かにそうだったね。でも、今は違うんだよ。愛はそんなに万能なものじゃないって、気づいたから」
魔女自らが一から作ったブレンドティーをほんの少し啜る。それから視線を逸らして、ほぅと小さくため息をついた。理由は……聞かない方がいいだろう。直感でそう感じた。
「そう……ですか。では、僕の恋は……」
「あー、他のとこでやってちょうだいな。ワタシはもう、何にも分からなくなってしまったから。愛なんて、知らないんだから」
〜愛があれば何でもできる?〜
どうしてあの時、私は言えなかったのだろう。
「待って」の一言を。
せっかく大好きな人と放課後一緒になれたのに……
二人っきりになれたっていうのに。
もっと一緒にいたかった。
ずっとその人と笑って話したかったのに。
「ばいばい」なんて、したくなかった。
「好きです」って、伝えたかった。
……なんで言えなかったんだろう。
そんな自分が嫌になった。
〜後悔〜