田中ボルケーノ

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7/5/2025, 2:50:50 PM

海を尋ね

波音に耳を澄ませ

聞きたいのは

我が本心

     
        「波音に耳を澄ませて」

6/26/2025, 10:17:46 AM

またいつかどこかで、ね

君からの

最後の声にならぬよう

知らない街でも

怖くても

目を開けて泳ぐんだ



            「最後の声」

2/20/2025, 12:26:02 PM

故人を偲ぶという時間が割と好きである

もちろんいなくなったのは寂しいんだけど

ふ、とした時になんとなく

そう言えば、こんなこと言ってたなあ、とかつって

思い出したりして


例え泡が弾けても

その飛沫が

糸で結びつき

誰かとの繋がりを示してくれる


その巡らされた糸の中に立ち

幾度と思い出しては

私は生きる、ということの意味を

また感じるのである


            ひそかな想い

2/4/2025, 1:36:18 PM

今回のもハズレだったわ

あんなのの為に三ヶ月も費やして
私の人生計画狂っちゃったじゃないの

なあにが貴方を幸せにしてみせますだ、バカヤロウ

思い出して、流し込んだタバコが喉にひっかかり、むせる



初めて会ったあの日、彼はまだ9月なのにタートルネックで現れた

この季節にタートルネックを着てるのは彼かナダルぐらいだろう

初めて会ったけど、私に食いついたのはヒシヒシと感じる
そして、これはハズレだな、と一目で気づいてた

でも、なんとなく一生懸命な態度に
なんか無下に冷たくするのも感じ悪いし、仕事での不満とか愚痴とか
職場では言えない穢れがたまっていて
丁度いいわ、と思い切り吐き出してみた

彼はうんうん、と聞くだけで
あーしろ、こーしろとか言わず
ただ大変なんだね、と静かに頷いている

これまでは金も持ってないくせに
優位に立とうと偉そうに私にアドヴァイスしてくる男もいたから
なんとなく拍子抜けしちゃった

この日の一回限り、のはずが
また会えませんか、のメッセージに
次の相手を探すまでの暇つぶしに、と思い
それから何度か会うことになった

どうやら金はなさそうだけど
ただ愚痴を吐き出すのに丁度いいから

そんな気持ちで何度か、
それだけの気持ちだったのに


今日も待ち合わせで
いつもの場所で彼を待っていた、その瞬間

街中を歩いていた人が

突然、静止する

まるで世界がバグったみたいに

え?何事?と思うも束の間

爆音でBGMがかかる

ビートに合わせて
周りで静止していた人達が踊り始めた

この曲はたしかマイケル・ジャクソンのビリージーン

動きに妙にキレがある
練習していたかの様な動きだ

そして人の波をかき分けて
彼が現れた

いつものタートルネックを身に纏い
一際キレッキレのダンスを披露しながら
私に近づいてくる

その目には自信が宿っている

そしてその手にはこれでもか、という程の大きな花束

これは、マズイ
と気づいた時にはすでに遅かった

BGMが止まると同時に
エキストラも停止する

つかつかと、人を分けて
私の前に現れたタートルネックのマイケル・ジャクソンは
国道まで響くような高音で叫んだ


必ず貴方を幸せにしてみせます
僕と結婚して下さい

片膝をつくと私に花束を向ける


一瞬の静寂

冬の静けさが

永遠を誓う

その瞬間を

待っているようで

私は花束を受け取った


停止していたモブ達が一気に動き出す

その場の全員が

おめでとう、と言いかけたその刹那

私は受け取った花束を

右手に持ち替え

背筋に力を込め

思いっ切り踏み込んで

タートルネックの上を目がけて

全力で振り下ろした


恥ずかしいんじゃ、ボケ

チラチラと花びらが舞う


家に帰りタバコに火をつける

あんなのの為に三ヶ月も費やして
私の人生計画狂っちゃったじゃないの

なあにが貴方を幸せにしてみせますだ、バカヤロウ

なんで普通にしてくれなかったんだよ

普通でよかったのに


            永遠の花束

2/2/2025, 12:10:09 PM

あっさり
なんの前触れもなく
ぽっくり逝ってしまった

もちろん涙も流したが
あまりに突然で
なんとなく実感も沸かず
今に至った、という感じだ

1年はあっという間で
集まった親類から憐れみの言葉は頂戴したが
それは私に対してなのか
それとも何か一周忌という場面で
この場を取り繕う為に発言した言葉なのか
判然としなかった、けど

まあ、それなりの受け答えをし
儀式は滞りなく終わり
一人、閑散とした部屋で夫との想い出を噛み締めてみる

優しい人だった
亡くなった後に気づいたけど
私はかなり甘えていた気がする

言葉には出さなかったけど
私のワガママも全て受け止めてくれて

ありがとう

もう一年経つし
決めていた

整理をしよう
手放せなかった彼の遺物達
一年そのままだったけどきっと許してくれるだろう

なんとなく踏ん切りがつかなかったけど
思い切った方がいいんじゃない、との友人の言葉を頼り
容赦なく片付けることにする

大事な物は思い出として
私の脳内フォルダに仕舞いながら
ドンドン捨てる

粗方、整理が終わった頃
机の奥から一つ気になる物を見つけた

手紙
見知らぬ手紙

白い便箋に入っており
宛先は亡くなった夫で
裏を見るとカオリと書いていた
住所にハートつきで

表の消印は私達が結婚した次の年

どうやら便箋の中に折り重なって
3枚ほどのメッセージがあるようだ

見つかったのは夫の机の最深部
嫌な予感しかしないその中身に手を伸ばす

私の気持ちが沸騰石を入れ忘れたフラスコビーカーの様に一気に沸き上がる

中身がビシャッと飛び散る

フラスコから破裂音

裏切り?
カオリ?誰?愛とはなんだろう、思い出、破壊
二人の夢、悲しみ、なんで急に死んじゃたのよ、裏切り者、裏切り者、ひとりぼっち、寂しい、バカヤロウ

勝手に死ぬなんて

見ない方がいいと思ったが
友人の言葉を思い出す
思い切った方がいいんじゃない?て

意を決して
中身を覗く

全てが壊れる覚悟で
一文字ずつ追う


ダッダーン!ボヨヨンボヨヨン!
ビックリした?
吾輩の罠にゃろ~ん😸
お前がこれを覗くってことは
吾輩の愛がまだまだ足りないってことだね
これからもずっとお前と一緒にいてあげるから安心するにゃんね😸
ニャッハッハ😸

と、書かれてた


私は、チクショウ、と呟き
久しぶりに大声で笑った

   
            隠された手紙

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