田中ボルケーノ

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1/27/2025, 3:49:02 PM

今まで誰にも言えずに
黙っていたことがある

ルンバが欲しい

お掃除ロボット

クルクル回って
寡黙にお掃除してくれるなんて
なんて愛らしいんだろう

家に欲しい
家族にしたい

でも、ネットを見てたら
誹謗中傷、とまではいかないけど
不満の声が聞こえてきて

やっぱり迷う

今日、ジャパネットたかたで
キャンペーンをやっているのを知った

ビシビシと購買意欲を刺激される

調べたら同じ型がビックカメラでも同じ様な金額だった

ここまでの僕の行動を
整理して考えると
お掃除ロボットは欲しい
けど、やっぱりそこそこ値段がする
その分購入した時にこの期待を裏切られるのが嫌なんだ、と思う

だから
僕はその一歩を踏み出すべきか
迷っているんだろう

           
           小さな勇気

1/25/2025, 1:48:54 PM

ふぅ、と息を吐き
両の足をしっかりと着接すると
緊張の面持ちで盤面を見つめる

一週間の努力の成果がデジタルで表示された

81.7

右手を握りしめ
無言でガッツポーズを決める

スコア -1.3

やっぱりだ、予感がしていた
今回の方法は間違いないと信じていた

これを続ければ60㎏代も夢じゃないんじゃなかろうか

と、思い始めたところで自分を制す
おいおい、先走りすぎだぞ
何回失敗してきたんだよお前は
まだ序盤、気を緩めるな、継続は力なり


そして一週間後

ふぅ、と息を吐き出す
両足を乗せデジタルを確認した時
私の自信は確信へと変わる

80.2
スコア -1.5

無言で小躍りする

前回よりスコアが良い

これは見えた
70㎏代まで残り僅か0.3
夢に見た60㎏代も射程に捉える

私は間違っていなかった
後は波に乗るだけ


さらに一週間後

成果というのはプロセスの積み重ねである

何も恐れる事はない
堂々と両足を乗せる

84.0
スコア +3.8

きっと何かの間違いである

一旦設定をクリアし
もう一度乗る

84.1
スコア +3.9

なんでさっきより増えてるんだよ
体重計を睨みつける

どうやら今回のダイエットも失敗の様だ

だけど私は諦めない
いつの日か
あの頃の体型を取り戻すまで


           終わらない物語

1/24/2025, 4:13:03 PM

新年会の二次会に
どうにも取り扱いに困るヤツが混じっている

斎藤

一次会がそろそろお開きのタイミングで皆をカラオケに誘ったのは斎藤であった

どうしても聞かせたい歌がある、とのことで
酒の勢いと興味が混じり仲の良い同僚五人で二次会にいくことにした

入室してすぐ、雰囲気的にドリンクを頼むタイミングで斎藤は早くも選曲に入る

画面に映し出されたのは
相川七瀬

え、斎藤が相川七瀬?
イントロのロックチューンに合わせて場が盛り上がる

突如始まった相川七瀬は職場での斎藤とリンクしない

斎藤×相川

一体これどうなっちゃうんだ、という期待で室内は溢れかえる

ドリンクは後回しだ
タンバリンと手拍子の中、皆の期待を一身に背負い、斎藤は自信満々にマイクを取ると

大声で歌い始めた

ところがイントロまで盛り上がっていた面々は、斎藤の異常性を直ぐさま感知する


声が異様に高い

ステンレスにノコギリを当てて全力でギコギコ裁断している様な歌声

まだAメロだが一気に酔いが覚める

歌声が耳に入るたび
本能が信号を出す
これは危険だ、と

サビにかかり
斎藤はもう一段、ギアをあげた

いよいよ脳が拒絶する
カラス避けに使えそうな周波数

熱唱

4分間

耐えに耐え

斎藤は最後

夢みる少女じゃいられない、と絶叫していた

歌が終わると斎藤はマイクを握りしめ
満面の笑みを浮かべている

恐らく宴へ参加した後悔と
彼の情熱と僕らの拒絶との狭間で
反応しないわけにもいかず

なぜだか僕らは
拍手をした


            優しい嘘

1/23/2025, 1:01:06 PM

なんで世の中の雑音まで感じないといけなくなってんのかな

アンテナビンビンにおっ立てててたら

会ったこともない人達が

あたかも不幸に合ったと感じてしまう

アイツが悪いとか

アイツのせいだとか

でもさ、誰だよそれw

そんなもん知らねえよ

野菜が高いのが目下の課題で

キャベツは高いからスルーしたけど

白ネギで迷う

白ネギは好きだから

すぐ使うし半額のにするか

でも、半額じゃない方が断然活きが良さそうだ

瞳をとじて

未来を描く

この選択が私にもたらす未来を

想像し

私は決めた

ひとつを選び

籠に入れる


             瞳をとじて

1/22/2025, 1:33:47 PM

え?なんて?

聞き馴染みのない言葉に思わずタメ口で聞き返してしまった

あ、すみません、もう一回お願いします

と言い直すと、渋々教えてくれた
一回で聞き取れよ、といった態度で

彼女が欲しいのは、ほうらいのたまのえだ、だそうだ

なんだよそれ、聞いたことねえぞ、そんなもん、と思いつつも
とりあえず、探さないことには始まらないし言葉を分解して考えてみる

ニュアンスから多分、ホウライの玉の枝、なんだろうな

ホウライってとこにある玉から枝が生えてる雰囲気だ

でもこのヒントだけで手探り捜索は正直しんどいわ
いくらこっちが一目惚れした側とはいえ、男五人並べて私の欲しいもん見つけたら結婚してあげる、てのはなんか、あんまりやろ

そして聞き返した時に渋々応えてたあの態度

なんか思い出したら段々ムカついてきた

いくら美人つったってあんな態度は良くないよな、こっちからわざわざ出向いてんのに

しかも籠の中にいたし、本当に美人かもよくわかんなかったし
竹から生まれたとか噂あるけど、俺、もしかして騙されてんじゃねえかな

あのジジイもなんか胡散臭いし、なあにが竹取の翁だよ、
直訳したらただの竹刈りジジイじゃねえかよ、偉そうにしやがって

もういいや、ヤメだヤメ

帰ろ


そんなことも朧気に忘れかけた頃
ニュースが入った

あの時、同席した他の四人が
色んな事故に合い再起不能に陥ったらしい

震え

怒りによる震え

なんちゅう話だ

美人との結婚を餌にありもしない与太話を信じてひどい有様らしい

こうなったら

いても立ってもいられない

桜の木の枝を一本へし折り

屋敷へ乗り込む

人の気持ちを踏みにじりやがって

五人目の俺が

お前が欲しがった、ホウライの玉の枝をお見舞いしてやろうじゃないか

ごめんごめん、と翁が出てくる

あの女どこいった

と尋ねると

月に帰った

とか言うので

嘘つけジジイ

つって

思い切り桜の枝でシバいといた

ふざけやがって



          あなたへの贈り物

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