ハトを飛ばしてみたい
その足に手紙をしたためて
あなたのもとへ飛ばしたら
どんな顔をするんだろう
ハトが豆鉄砲を食らったような顔をするのかな
そして思う
ハトが豆鉄砲を食らった顔ってどんな顔なんだよ
そもそも豆鉄砲がよくわからない
豆鉄砲ってなんだろう
見たことないし
わかりそうでわからない
ハトが豆鉄砲を食ったとか食らったとか
どんな状態か
わかりそうでよくわからない
とにかく僕は
ハトを飛ばしてみたい
あなたのもとへ
豆鉄砲を食らわせるのだ
手紙を添えて
あなたのもとへ
昨夜、彼のアカウントから正式にアナウンスがあった
どうやらホンモノだったらしい
初めて開いた家族会議は秒で決着した
家族五人、全会一致で売ることに決定する
父が我が家の外壁に落書きを見つけたのは、二週間ほど前
けしからん、と怒り心頭で兄を呼ぶ
物置からハシゴを取ってきて、と
我が家の外壁の高さ2メートルほどの位置に、あろうことか、落書きをされたのである
ハシゴに登りよく見ると70㎝四方の透明のサランラップが貼り付けてあり、その上から書かれているようだった
綺麗な戦車の絵とサインらしきもの
父は手の込んだイタズラをしやがって、とラップごと剥がそうとするが
下で見ていた兄から、待った、がかかる
父さん、ちょっと待って
え、なんでだよ、と無視して剥がそうとする、が
再び兄が大声を張り上げたので手を止める
マジで、ちょっとだけ待って、と
父は兄の勢いに気圧され仕方なくそのままにすることにしたようだ
兄はその絵をSNSで一度調べたいらしい
すると一週間後、地元のテレビ局から取材がきた
なんか話題になってるとか
父は満更でもない顔で、いやあひどいイタズラですよ、まいったなあ、と愛想良く応えていた
テレビはサランラップの絵を映して帰っていった
その三日後、父の携帯に謎の番号からの着信があったらしい
不審ながら出ると流暢だけど外人ぽい話し方で、
500万デドウデスカ?と言われたので気持ち悪くてすぐ切ったとのこと
気になって電話番号で検索すると、アラブ首長国連邦からの着信だった
ルフィの一味かよ、なんなんだよ、と呟いていた
そして昨夜、兄が深刻な顔で話し始めた
あの絵のことだけど、本人のアカウントから正式にアナウンスがあった、と
先日、日本に作品を残した、
薄いサランラップに重厚な戦車を描くことで戦争の希薄さを表現した新作、との発表
バンクシー
どうやらあの絵はバンクシーが描いた
紛れもないホンモノの新作、だそうだ
そんなもんが、なんで我が家に
直後、父の携帯が鳴る
画面にはアラブ首長国連邦の番号
恐る恐る取ると、
先日ハ失礼シマシタ
今回700万$デ、イカガデショウカ?
事態を受けて、我が家で初めて開いた家族会議は即決した
全会一致で売ることにする
翌日、我が家の庭に全国から報道陣が集まる
日本からバンクシーの新作が出品されるのを固唾を飲んで見守っている
全国生中継だそうだ
兄と私で支えるハシゴは震えている
業者には全て断られた
責任が終えません、と
父は顔面蒼白のまま
一歩一歩、ハシゴを登る
700万$の値がついた
厚さ0.01㎜の平和への想いが
ひっつかないように
今朝から弟は部屋から出てこない
母はついに泣き出した
サランラップが
破れないように
もつれないように
父は
一家の主として
剥がし始める
ガタガタと歯を鳴らしながら
そっと
慎重に
少しずつ
そっと
そっと
最近は特に、画面越しでもいいでしょ派が増えたように思う
じじいくさいことを言ってんのかもしんないけど、人生も中盤に差し掛かると余計に思う
やっぱ景色は、生でしょ、と
景色とは目的で
その誰かが言ってた絶景とやらが
本当にそこに存在するのかを確かめる作業でもあるわけで
そこまでの行程も含めて楽しむのが景色なんだと思うんだよな
まだ見ぬ景色は
僕の中に閉じ込めておいて
いつか出会えるその日を
楽しみにしている
まだ見ぬ景色
念じる
毛布を整え頭を枕の中心にとり
天井と正対で真っ直ぐに
瞼を閉じ前頭葉へ空気を直に送り込むイメージで
鼻からゆっくりと息を吸い上げ、口から吐く
とにかく念じる
もうとにかく、ここから先は
念の類いである
一時停止されたビデオテープ
リモコン無しでの再生を今夜、試みる
記憶をまさぐり
出来る限りの素材を思い出す
というのも昨晩、
私の夢に突然、優香が現れた
あの有名タレントが絶対に私に気がある感じで話が始まり
よくわからないけど、
いよいよ一緒にお風呂に入る場面までもつれ込んだ
そこまでは確かに見れた
だが、あろうことか、私はそこで目が醒めてしまったのである
もちろん優香は私なんかが手が届かない
高嶺の女性と認識しているが
ぶっちゃけ、それまで大して興味がなかった
なのに、私の夢に現れた途端、
一晩で恋に落ちたのである
こうなると、どうしても続きが見たい
優香とお風呂に入りたい
その想いだけに集中して
枕の中心に頭を置き
天井と平行になり
目を閉じ
ただ念じるのである
あの夢の続きを
心というもんは
香りとか温度の様なもんで
形は見えないけれども
確かにそこに漂うもの
僕らはお互いで話す度
無意識にその香りを嗅いで
温度を自然に確かめ合ってる
スープもピザもさ
温かい方が香りも良くて
美味しいわけで
出来れば貴方には
あたたかいね、と言ってもらえる様に
いつも想ってる
あたたかいね