田中ボルケーノ

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12/25/2024, 11:27:49 AM

毎年、杞憂であった

ケーキだのチキンだのレストランだの

プレゼントだの結ばれただの


サンタクロースは我が家のドアをスルーして

恋人同士に寄り添うのだから


私は暗黒を纏いし

黄金騎士である


今宵、また降りかかる孤独を蹴散らす為に

馬に跨がり荒野を駆け巡るのである




         クリスマスの過ごし方

12/23/2024, 1:20:58 PM

東京ドーム280個分、だそうだ

その広大な敷地に集められた段ボールの数、約1,400万個

今年は7名である



毎年、高い報酬で募集をかける

業務の性質上、秘匿性が絶対条件になる

「年末に稼ぎたいあなたに朗報、絶対に秘密を守れる方限定、子供の夢を叶えられる職場、和気あいあいとした明るい雰囲気です」

今年はその募集が仇になった


どうやら闇バイトと思われたのである


大体、例年であれば40,000人から50,000人集まる

22:00-28:00までの6時間勤務で一人頭平均300個程度

時間個数だと1時間50個、大体兄弟がいるので件数で換算すると25件/h

かなりキツいが子供達の夢を壊すまい、と
一致団結してここまでなんとかバレずにやってきた


今年、集まったのは7名

たった7名

一人頭、200万個

絶望的である


だけど、俺達は

子供達の夢を

壊すわけにはいかない



配りきってみせる

絶対に



              プレゼント

10/18/2024, 3:30:23 PM





やってもうた

ハンコ

違うとこに押してもうた


気づいて血の気が下がる


残業して居残りして
最後、これまで終わらせて帰ろう、とハンコをポンポン押していった
慣れた作業

今日も俺は頑張ったぜ、お疲れさん、これ終わったら帰りまーす、って誰もいない社内でノリノリで一人で呟いてたら



と気づいた

ポンポンの、勢いで押したハンコが押しちゃいけないとこに押されている、て

しかも大型契約のハンコ

営業部が盛り上がっていたあの書類である


思いっ切り息を吹きかけて
ティッシュで軽く拭いてみたけど
消えない朱肉

一旦落ち着こう

事態を飲み込むため深呼吸をして
落ち着いたところでもう一度書類を見つめる

何度見ても大事な書類に変わりは無かった

僕は震えている

明日からの三連休がどす黒い暗雲に飲み込まれる

家に帰っても覚めない悪夢




罵詈雑言

油汗で呼吸ができない

今期最大の大事な契約がお前のせいでご破談に

三日三晩攻められる

いきり立った営業部長から顔面にデカいハンコをポンポン押される

ああ?間違えた、ああ?間違えた

間違えて済むなら契約書はいらないんだよバカヤロウ、と

僕の顔面は朱肉にまみれて
それでも部長は押し続ける


こうして僕の三連休は悪夢を見て終わった


連休が明け
もう謝るしかない
覚悟は決めていた
朝一で営業部へノックする

部長、あの、おはようございます

あの、すみません、実は契約書のハンコを押しまち


まで発言したところで、遮られる

あ、ごめん、今それどころじゃないんだよ
大型契約が破談になっちゃってさ
先方からいきなり契約解除して欲しいだって、
理由も告げずにありえんやろ

頼んでた契約書もやり直しになるかもしらん、ほんと申し訳ない


あ、そうですか
それはけしからんですね

といって営業部のドアを静かに閉める

僕は社内の廊下を音を立てずに全力で駆け
薄暗い階段を駆け上り
屋上へ繋がるドアを蹴破り
思いっ切り叫んだ

うおおおおおおおおおおお!!

全身でガッツポーズを決める


屋上から

空を見上げると

真っ青に突きあげる様な

透明な空

これぞまさに、

秋晴

   
               『秋晴』

10/16/2024, 1:43:32 PM

おっと、いけない

過ごし易くなったせいだろう

気づけばまた漏れてしまっていた

私の優しさから木漏れる

やわらかい光が


世界は優しさで出来ている会を立ち上げて早一年

会長としてその名に恥じぬ活動を続けてきたつもりだ

優しさを基準に生活サイクルを組みたてていると
毎朝のスタートはご近所のパトロールになる、これは自然な流れだろう


玄関を開けると、日差しが差し込む

外へ出て背伸びをして
晴れやかな太陽と澄んだ空気にお礼を言う

ありがとう、サンシャイン、と


畦道の野菊に気づいて
おはよう野菊、朝露で風邪ひいてんじゃねえの、と話かけると

おはよう会長、今朝は寒いね、でも寒くなると咲くんだ私、と野菊は照れくさそうに笑う

親指を立て
楽しみにしてる、綺麗に咲かせろよ
と笑った

続いていつものハトが
おはよう会長、今日も精がでるね、
と声をかけてきた

いつもは人間語で返す、が

クルックークルックーポポポポとハト語で返事をしてみた

意表をつかれたハトは喜んでポポポポ言いながら飛び立っていった

そしてハトが上空から見えるか見えないかの位置で

首を前後に動かしながらクルックークルックーと

密かに練習していた渾身のハトのモノマネを披露すると

ハトは上空で爆笑していた


私はこうした地道な活動を続けている

その甲斐があって近所は優しさに包まれはじめた感触がある

そしてこれからも

世界中が優しくて

やわらかな光に包まれる

その日まで

活動を続ける所存である


世界はきっと

優しさで出来ているのだから


           『やわらかな光』

10/15/2024, 2:28:22 PM

鋭い眼差しで睨み合い

視線を合わせたまま二人は

リングの中央を静かにぐるぐると回る

いよいよデスマッチの様相を呈してきた

時間無制限一本勝負

台所に今、ゴングが鳴り響く


端から見れば
そんなの些細な事だろ、と見えるのかもしれない

単独での罪の重さでは軽微だが
罪が重なるケースでは、時として重罪となる

発端はカレーであった

母は先に家に帰っていた父にLINEを送る

お米炊いといてねハート(スタンプ)
米は洗って仕込んでるから、スイッチポン(スタンプ)と

父は、OKでござる(スタンプ)と返信した、のだが、

仕事から帰った母が台所に立った瞬間

会場の照明が暗転した


米、炊けてないじゃない


リングにスポットライトが当てられ、母が呟く

マジでこれ、何度目だよ、と

察した父は慌ててマイクを持つとロープをくぐりリングに上がる

あー、ごめん
忙しくて忘れてたわ
スマンスマン

母は父からマイクを奪い取り

いやあ、さぞかし忙しかったんでしょうね、今夜はカレーなのに、
炊飯器のスイッチをポチッと入れるの忘れるくらいYouTubeのショート動画見るが忙しかったんですよね
ほんとご苦労様です、YouTuberは大変ですね

って、お前、宮迫かコラ
そもそもお前YouTuberじゃねえだろ
YouTuberなめとんかワレ、HIKAKINに謝れよ、バカヤロウ
米なしのカレーとか、なめやがって


と、ブチ切れた

これで勝負あり、と思われたが

あろうことか父はやめときゃいいのにモゴモゴと言い訳を始める

なんのプライドか充満した油にさらに熱々の火がくべられる


リング中央で

鋭い眼差しで睨み合う二人

カレーの香る台所は今宵

灼熱のリングへと変わり

いよいよデスマッチの様相を呈してきた


早くご飯が食べたいのに


        
            『鋭い眼差し』

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