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10/28/2024, 1:49:48 PM

10月28日 月曜日
No.2 【暗がりの中で】

夢を見ていた。
2年前に亡くなった両親と近所の公園で遊ぶ夢。


この夢を何回見たことだろう。
はじめは夢だと気づかずに淡い期待を抱き、目覚めてはじめて幸せの感情が夢の中だけだったことに気づく。


目覚めてしまえば、いつもの暗がりの中。
毎回タンスに寄りかかり、木の温もりを感じながら涙を流していた。


両親が急な交通事故で亡くなってから、2年。
祖父母のいない私は、顔も知らない親戚にたらい回しにされた。
母と仲の悪かった母の姉が週に一度うちに来て必要なものを揃えて帰っていくだけ。
それでも、生きていられるのはおばさんのおかげだから、わがままなんていってられない。


それに、私の親はママとパパだけ。
他の人なんていらない。










「どうしたの?そんな暗い顔して」


ママの優しい声がしてはっと顔を上げる。



私はブランコに座っていた。



「どこか具合が悪いのか?」


パパの低くかっこいい声が聞こえる。






これも夢。目覚めれば私は1人孤独だ。





「どうして?どうして私を置いていったの、」






気づけば私はパパとママにそう言っていた。






ママはびっくりしたようにパパの方を見る。
パパは私を見つめて固まっていた。
その瞳を真っ直ぐ見つめ返す。
パパの綺麗な茶色の瞳に輝くものが溜まっていく。














「頑張って、生きてくれ」











パパは今にも消えそうな声で弱々しくそう囁いた。


瞳に溜まった輝きが頬に流れていた。














––––はっとして意識が戻った。
重い瞼をゆっくりと開けた。
あたりは真っ暗で…






でもいつもの暗さとはどこか違った
孤独を感じさせる真っ暗な部屋にカーテンの隙間から少し差し込む太陽の光は、まるで「ちゃんと前を向きなさい。未来は明るいよ。」といっているようで大嫌いだった。

 






でも、そんな光はこの場所には見えない。
あたり真っ暗で自分の足元すらも見えない。
暗闇を手探ってみる。
いつも横にあるはずのタンスがない。










真っ直ぐと前を見つめる。
どこまでも真っ暗で何も見えないのだけど、なんとなくこの先にずっと求めていた”光”があるように感じた。


なんとなくだけど、絶対にこの先にある。



私が求めていたのは明るい未来じゃない。











私はこの世にたった二つしかないその光を求めて
暗がりの中を歩き出す。













暗がりの中で大好きな声が聞こえた





「生きてくれ」






胸がギュッと苦しくなって目に涙が溜まる。










でも、歩き出した足を止めることはできなかった。



10/27/2024, 2:59:06 PM

10月27日 日曜日
No.1【紅茶の香り】

 10月23日–今日もやかんを手に取り自ら罪悪感に飛び込    むティータイムを迎える。

甘酸っぱいレモンティーの香りが、私を甘酸っぱい青春の日々の記憶を抉り出す。
月に一度のあの子とのお茶会。
きつい部活が唯一休みの一日。毎日部活で顔を合わせるあの子とは、その休みさえも一緒に過ごす。満面の笑みで私に話しかけてくれたあの子は私にとって憎い存在でしかなかった。彼女の笑顔に私も笑顔で応じる。「こいつの人生なんかめちゃくちゃになってしまえばいいのに」そんなことを私が思っていたなんてあの子はちっとも思わなかっただろう。
 

私はただ羨ましかった、、、
私より遅くに始めたバレーでエースになれるあの子が。
運動だけでなく勉強もできちゃうあの子が。
先生にも男子にも女子にも、、みんなに好かれちゃうあの子が。


なぜあんな子が私なんかの底辺の人間と仲良くするのか
私は引き立て役だった。
きっと。そうだった。いや、絶対そうだった。


「私は一番信じたいって思った人を信じて仲良くしてるだけだよ」


泣いて怒る私を抱きしめながら囁いたあの優しい声が今になって思い出される。



何故私はこの言葉を忘れていたのだろうか。



私は気づいてあげられなかった。
今すぐあの子に会いたい。もう一度会って話したい。
一緒にまたレモンティーを飲みたい。






3年前、1人で部屋で毒入りのレモンティーを飲んで自害したあの子と。










––––––そんなわけない。あんな完璧な子が自殺するわけはない。



















私は今日も1人暗闇の中でレモンティーを口にする。
罪悪感でいうことをきかなくなった私の手は傷でいっぱい。そして今日も新たな傷が増える。飛び散った血飛沫がレモンティーの中に入る。


涙が止まらないのは何故だろう
あの子がいなくなって私は嬉しい









きっときっとそうだろう。
私は赤の滲むレモンティーを口にした。









甘酸っぱい香りがする。
気づけばやかんを手に頬には涙が流れていた。
今日もまたこの紅茶の香りに包まれて、、、