「瞳をとじて」
「ねえ、瞳をとじてみて」
そういって彼はわたしの目元に手を出す。わたしは何も言わずに瞳をとじる。
それから彼に連れられてどこかへ連れて行かれた。
「ねえ、瞳をあけてみて」
彼の言葉に応じてわたしは瞳をあける。
そうすると、そこに広がっていたのは美しい街並みだった。高い建物に並木、それから街を歩く住民たち。
「きみにこの景色を見て欲しかったんだ。これからぼくたちだけでこの領地を治めるんだよ」
そう言われてはっとする。そう。わたしと彼は伯爵家にいるんだと。
わたしは元々平民の出身だ。伯爵家となんて関わりはないし、あってはなるないものだ。
だが、彼はわたしにも平等に接してくれた。
今思うと、彼はわたしの容姿が気に入っていたのかもしれない。長くてクルクルと巻かれているようなブロンドの髪に、青く澄んだ瞳。彼はその時にもう、わたしの事が好きになっていたのだろうか。
「ねえ、愛してるよ。本当に。愛してる」
そんな事ばかり言われていると照れてしまいそうだ。わたしは思わず顔を隠す。
彼はそんなわたしを愛でながら言う。
「ぼくだけを見てね。きみの瞳はぼくを見る為にあるんだから。他は見る必要がないから、ぼくを見る時だけ瞳をあけてね」
おかしい事を言っているようだが、案外彼は本気のようだ。わたしはパニックになり、思わず拒否してしまった。
彼はわたしを部屋に軟禁した。
わたしはひとりで部屋にずっといる。もう何もしたい事はないし、できる事もない。
扉が開く音がした。
それからわたしはしばらく彼に愛でられ、彼はわたしを見ながら言う。
「ほら、もうぼくは戻るから。瞳をとじて。愛しい人」
友情
「俺たちさ、付き合わない?」
そう言われた私は彼の方を見て涙を流した。
「男女の友情って、成立するものだと思ってたのに。」
男女の友情は成立しません。もうリームーでバイヤー。
オニロ。
「何もいらない」
私が欲しいのは君 君だけだ
他には何もいらない 君からの愛が欲しいんだ
それが叶えば 僕は君を やっと やっと 殺せる
オニロ。
「もしも未来を見れるなら」
「ねえ!もし未来が見れるなら何したい?」
一人の子が聞く。みんなはその言葉に耳を傾けて様々な答えを出す。
「ええ?未来が見れるなら何したいって───そりゃあ、予言者になるに決まってるだろ!」
「未来が見れるんなら競馬に賭けるぜ!」
「いやいや、未来が見れるんですから、僕は将来何になったら良いのか見極めて良い人生を歩みますよ」
「でも、見れたってそんなに変わらないよ?」
一人の子がぼそっと一言漏らす。みんなはあまり意味がわかっていないようだ。
だって、この世界はループしていて、あの子だけが知っているから──────。
「幸せに」
僕たちは付き合ってから、絶対に一緒だった。
何があっても、僕たちは離れなかった。僕は彼女と離れたくなかったし、きっと、彼女もそうだろう。
高校を卒業して、同棲し始めた。
僕は人生の絶頂期だった。彼女もきっと、僕といるのは楽しい時間ではないだろうか。
でも、最近彼女がおかしい。僕に対して、とても冷たいんだ。顔色も悪いし、何か不調なのだろうか。
僕は彼女の手を取り、彼女が瞳を出さない事で、初めてわかった。
あぁ、彼女は、死んでいるのだろう、と。
オニロ。