わたしに『こう』させたことを、生涯忘れずにいて。
君のために、わたしが選んだことを。
でも、別に、悔いる必要はない。
わたしはこんなにも晴れやかな気持ちで死んでいく。
君が幸せになるためになら、なんでも、いくらでも。
わたしの全部だってあげると言ったでしょう。
だから、誇って。
いつかの日、君が迷い苦しむ日にも、思い出して。
君にはその価値があると、わたしが認めたことを。
苦い後悔に俯かないで。
背を押されたのだと思って、顔を上げて、生きてね。
#後悔
あんた、子供のままで百年も生きて、それで結局、そのまま死ぬんだね。
そんな言葉に、二人、笑い合う。
そうだねえ。わたしはずっと子供のままだった。
百年。百年か。
でも、あの世でもきっと、わたしはこの、馬鹿みたいなわたしのまま。大人になんてならないまま、あなたを待ってる。
ほら、こんなにピュアな瞳をしてるでしょ。
信じる心で空が飛べそうな目を、してるでしょ?
だから、大丈夫だからね。ゆっくりおいでね。
#子供のままで
届いた、と。その一瞬、確かに思った。
この喉をついた言葉にならない声が、あなたに。
あなたと目が合った瞬間、幽かに揺らめく瞳の光が、見開かれてパッと強くなった。
そこにある輝きは、ちゃんと、わかっていた。
そのように見えた。
それは繋がりだった。
手を取り合うよりも、口づけするよりも。
ずっと愛おしい、あなたとの疎通。
言葉にならなくても、伝わる。
あなたになら。
あなたとなら。
#愛を叫ぶ。
まだ生きていた。まだ死んでいなかった。
もう立てないと思っていたのに、まだ歩いていた。
どこに辿り着かずとも、進んでいた。
逃げるようにではなく、目指すために。
馬鹿馬鹿しいほど往生際悪く、呆れるほど愚かしく。
ひとつ、ひとつ、手にとっては捨てて。
ひとつ、ひとつ、踏みしめては過去にする。
あれから一年。
まだ行こう。もう少し。もう少し。
あと一歩だけでも。
#一年後
それまで恋だと思っていたものが、そうじゃなかったと思った。
それまでもっと優しいものだと思っていた気持ちを、そうじゃなかったと思った。
それまで無欲でいられると思っていた自分が、そうじゃなかったと思った。
そんなこと、知りたくなかった。
そんなものに、出会いたくなかった。
そんな日に、来てほしくなかった。
なのに、もう遅い。
待っていたわけじゃない。訪ねたわけでもない。
ただ、それはわたしを通り過ぎていった。
なかったことにはならない。忘れられない。
こんなにも遥か遠く過ぎ去った、今になっても。
#初恋の日