祈りだ。
ただ、一心に祈っている。
何をどうしてほしいのかは、言葉にできない。
誰に祈っているのかも、さだかではない。
けれど、ただ。
ただ、祈っている。祈り続けている。いつまでも。
#言葉にできない
華やかな赤。つややかな黄色。鈴生りの薄紅。
この咲き乱れる花々の中で、本当に欲しいものは?
君が、一番美しいと思う色は?
尋ねられて笑う。
わたし、あんたの瞳の色がいい。焙じ茶みたいな、深くて透明な色。
ねえ、わたし今、この花畑でお茶が飲みたいな。
あんたと、あんたの目みたいな色のお茶を。
花は誰のためでもなく咲くけど、あんたは、わたしのためにお茶を淹れてくれるでしょう。
わたしだけのために。
花より団子なんて言うなよ。団子も、まあ、あったら嬉しいけど。
#春爛漫
わたしはぎらぎらしていたい。
輝かしい星なんかじゃなく。
優しい木漏れ日なんかじゃなく。
美しい水面なんかじゃなく。
人を斬るための刃のように、氷を砕くアイスピックのように、地を割るツルハシのように、ぎらぎらしていたいんだ。
誰よりも鋭い切っ先で、あなたの胸を抉じ開けたい。
その心臓に届きたい。
そのために、誰よりも、ずっと、ずっと、ずっと!
#誰よりも、ずっと
遠ざかっていくだろう。
遠ざかり続けていくだろう。
同じにはなれないことを、思い知り続けるだろう。
遥か果てしなく、背を向けて歩いていくだろう。
でも。
僕らの心の居場所が、もし、この星のようだったら。
いつか、いつか、また向かい合えるかもしれない。
僕は、それを信じ続けよう。
青い惑星の裏側で、君とまた出会うことを。
#これからも、ずっと
照らされて、赤。
その頬が、少しずつ藍に沈んでゆく。
見えていたはずのことがわからなくなっていく。
夜明け、再びそれが明らかになるとしても、陽の光のもとで見たものだけが本当だろうか。
ここで、落日に隠されていく何かは?
君の中にある、夜の帳の内側は?
#沈む夕日