自室の床に置かれた無数の段ボール。
今日は仕事が休みなので、部屋の掃除を兼ねて断捨離することにした。
ある程度、いらない物を段ボールに詰め終わり、残るは……。
目の前の白いクローゼットと目が合う。
多分、約一年ぐらい開けていない。
いや、開けたら当時のことを思い出してしまうから、開けないようにしていたのだ。
覚悟を決め、クローゼットを開ける。
中には、沢山の可愛い服とスカートが眠っていた。
どれも全て、お気に入りだった服達だ。
……当時付き合っていた彼氏との思い出の服でもある。
出来るだけ見ないようにして服とスカートを掴み、サッと段ボールへ入れていく。
この服は確かデートで着た時の……このスカートは彼氏が似合うって褒めてくれたなぁ……。
だめだめ!思い出すな私!過去に囚われるな!
両手で一気に服達を抱き締め、クローゼットから取り出して段ボールへ投げ込む。
……よし、これで全部。
段ボールの蓋を閉じ、ガムテープを貼った。
どっと疲れが出てきて、段ボールを椅子代わりにして座る。
目の前には、中が空になったクローゼット。
私の心の中も、今こんな感じなのだろう。
……また、新しい恋が見つかるよね、きっと。
しばらくの間、何も入っていないクローゼットの中を、ぼーっと見ていた。
君のことを誰よりも愛しているよ。
えっ?証拠を見せてほしいって?
そうだな……。
君のことを好きだと言っている奴らを消してくるよ。
そうすれば、誰よりも愛しているって証拠になるし、君のことが好きなのは俺だけになる。
我ながらいい考えで一石二鳥じゃないか。
えっ?人を殺すのは怖くないかって?
ああ、怖くないね。
さっきも言っただろ?俺は君のことを誰よりも愛している。
君を手に入れるためなら、人殺しだってするさ。
……どうしてそんな悲しい顔をするんだ?
えっ?そんなことをする人とは思わなかったって?
だって君が証拠を見せてほしいって言うから……。
あっ!ま、待ってくれ!逃げないでくれ!
俺は君のことを!誰よりも!愛しているんだ!
どれだけ追いかけても、君はどんどん離れていき、手を伸ばしても届かなくなった。
郵便受けに入っていた一枚の手紙。
送り主は……私から?
おかしい、私は自分に手紙を書いた覚えはない。
新手のいたずらか詐欺だろうか?
恐る恐る手紙を開けて読んでみる。
"これを読んでいるってことは、無事に届いたってことね。私は10年後の私よ。10年後は、過去の自分に手紙を送る逆タイムカプセルが流行っているの。この手紙を送ったのには理由があって、それは……"
思わず、生唾を飲み込む。
10年後の私は、何を伝えるためにこの手紙を送ったのだろう?
覚悟を決め、続きを読む。
"10年後の私はイボ痔になってしまったから、過去の私はイボ痔にならないように、しっかりお尻を洗ってね!"
……なんじゃそりゃ。
わざわざそんなことを知らせるために、10年前の私に手紙を送るなんて……。
もっと、伝えることあるんじゃないの?
まぁ……イボ痔は嫌だし、気をつけておこう。
この日から、私はお尻をいつもよりしっかり洗うことを心掛けた。
いつもよりざわめいている校内。
今日はバレンタインデー、渡す側も受け取る側もソワソワしている。
俺は皆とは違い、今年もチョコを入れる大きい箱を用意し、積極的に受け取りを受け付けた。
「さぁ!女子諸君!遠慮せず、バンッバンッとチョコをこの箱に入れたまえ!」
廊下を通る女子達に声をかけるが、チョコを入れるどころか、なぜか早足で通り過ぎていく。
……なぜだ?こんなにもウェルカムなのに。
「あいつ今年もやってるね」
「去年誰からも貰えなかったのに懲りないわね」
「誰も渡さないでしょ。あんな奴に」
時折悪口が聞こえるが、俺は気にしない。
だって俺は今日のために良い行いを沢山してきたはず……だからだ!
今年こそ絶対貰える!そう確信している!
各休み時間にずっと受け付けるが、チョコを貰えなかった。
今年も敗北か……。まぁ、いいだろう。
来年の高校最後のバレンタインデーこそ、沢山のチョコを貰ってやる!
よーし!そうと決まれば早速準備だ!
俺は来年に向けて、今年より大きい箱を用意することにした。
狭くて少しひんやりとした個室トイレ。
まさかこんな時に腹を下してしまうとは……。
緊張をほぐすために、爆食いしたのがいけなかったのか?
力んでいると、ドンッドンッドンッ!とドアを強くノックされた。
「博士!まだですか!もうすぐ発表の順番が回ってきますよ!」
どうやら助手が私を呼びに来たらしい。
今日は発明家の発表会。
前回は賞を貰えず終わったが、今回の発明はすごい自信がある。
今度こそ賞を貰って有名発明家になるのだ!
「待っててくれ助手よ!もうすぐ出る!ふぬぬぬぬ!」
「博士!早く!」
「急かすな助手よ!出るもんも出ぬ!ふぬぬぬぬぬ!」
スッキリして会場へ向かうと、私達の順番は終わっていて失格になった。