人が行き交う賑やかな商店街。
私は隣で歩いている彼氏に伝えたい。
右鼻から鼻毛が一本出ていることを。
「あいつが飛び抜けてすごくてさ〜」
彼氏は最近起きた友達とのエピソード話を楽しそうに話している。
流れに乗って「右鼻から鼻毛が飛び抜けてるよ!」と言いたい。
鼻毛は風でなびいていて、まるで風鈴のようだ。
……よし、鼻に関しての話をしてみよう。
「今日は少し鼻がむずむずする……もう花粉飛んでるのかなぁ?」
私は彼氏の鼻に向かって言った。
「俺は花粉症じゃないからなぁ。毎年辛そうで大変だよな」
彼氏はそう言いながら鼻をスーハースーハーする。
同時に鼻毛が左右に激しく揺れた。
その後も鼻に関する話をふってみたが、全て素振りで終わる。
今日のデートは、彼氏の鼻毛のことで頭がいっぱいだった。
色んな情報が飛び交うネットの世界。
現実世界に疲れ、ここへやってきた。
この場所で現実逃避をするためだ。
好きなことを調べたり、見たりして、癒されよう。
だけど、サイトや動画を見ていると必ず広告が出てくる。
広告のせいで、折角の癒しが台無しだ。
何度も更新して消そうとするが、逆に広告時間が伸びてしまう。
だんだんとイライラしてきて、ストレスが溜まる。
癒しより怒りが勝ってしまい、ネットの世界でも疲れてしまった。
誰もがみんな、同じではない。
見た目、考え方……など色々違う。
だけど、世の中には同意を求めてくる奴らがいる。
拒否したら、異常者だと言われて仲間外れにされてしまう。
自分はそう思わないと言っただけなのに……。
それから他のことでも拒否し続けたら、いつの間にか一人になっていた。
みんなと考え方が噛み合わなすぎる。
自分の考え方は、そんなにおかしいのだろうか?
でも、それも個性だと褒めてくれる人もいる。
だからこれからも、違うと感じた時は拒否していこうと思う。
だって、誰もがみんな、同じではないから。
愛情をたっぷり込めたピンクの花束。
100本のバラがぎっしり入っている。
これを渡す相手は……ずっと好きだった人だ。
彼と付き合っていた彼女には、無理矢理別れてもらった。
これで、彼は私の物に……。
彼に花束を渡したが、地面に叩き落とし、何度も踏まれた。
彼は、私がしたことを怒っているらしい。
仕方ないので、持っていたナイフを取り出し、彼を刺して静かにしてもらう。
彼の血がバラに染まり、真っ赤になって、さっきより美しくなった。
薄暗くて静かな少し冷える自室。
今日は休みなのに、寒くて布団の中から出れない。
何か、温かくなる動画とかないだろうか?
スマホを持ち、動画サイトを開く。
新着動画を見ると、推しのショート動画が上がっていたので、早速再生してみる。
「色んなポーズで皆に笑顔を届けるよー!」
楽しいBGMと共に、推しは色んなポーズをとっていく。
どのポーズも可愛くて、推しの笑顔を見ていると口角が上がってしまう。
動画はあっという間に終わってしまったが、推しのおかげで心と身体が温かくなった。