無人島に行くならば、やっぱりスマホを持っていくだろう。
情報収集出来るし、いざとなれば助けを呼べる。
え?無人島には電波がないって?
大丈夫、Wi-Fiを持っていけば繋がるさ!
え?持っていける物は一つだけ?
そんなこと言わずにさ……ね?
え?それじゃ企画倒れだって?
君、数字だけを見ずに、タレントである僕をちゃんと見なさい。
え?この話はなかったことにだって?
ははは、冗談だよぉ君ぃ~。
お願いだから、僕を使ってくれよぉ~頼むよぉ……。
カラッと晴れた、高い空。
この前まで暑かったのに、一気に寒くなった。
冷たい秋風が、身体を冷やしに来る。
日中は暑くなると思って半袖で外へ出たけど……間違いだったかもしれない。
衣替えのタイミングが、年々分からなくなる。
まったく……もっと分かりやすく季節変わってくれよ……。
「今が秋だよ」と強調するかのように、秋風がひゅ~っと吹く。
分かった分かった……もう秋だな。
今日は帰ったら、衣替えしようっと……。
通勤、通学ラッシュで人が溢れている駅構内。
今日はなぜか、嫌な予感がする……。
人混みに混じりながら、ホームへ向かう。
階段を昇っている途中で、坂井さんを見かける。
俺と同じクラスで、最近気になっている女子だ。
噂では、恋人はいないらしい。
そうだ。一緒に学校へ行こうって誘ってみよう。
人を避けつつ、坂井さんの元へ近づく。
「坂井さ──」
坂井さんを呼ぼうとしたが、途中で止まる。
坂井さんは、男子と手を繋いでいた。
二人は笑顔で、楽しそうに会話をしながら歩いている。
ああ……嫌な予感は、これだったのか。
休憩時間になり、一気に騒がしくなる教室。
皆、誰かの机に集まって、楽しそうに会話している。
……羨ましいなぁ。
入学したての時は、友達沢山作るぞって意気込んでいたのに。
結局、誰にも話しかけれず、友達は一人も出来なかった。
だから休憩時間はいつも一人だ。
あの時、ちゃんと誰かに話しかけていたら今頃……。
そう考えると、だんだんと虚しくなっていく。
今からでも、遅くない……かな?
再び教室内を見渡すと、皆楽しそうに会話をしている。
今は話しかけづらいから、明日にしよう……。
そう思っても行動しない日が続き、友達が出来ないまま卒業してしまった。
この三年間で学んだことは、やっぱりスタートダッシュは大事だということだ。
街中に響き渡る、彼女の歌声。
歌手になることが夢だった彼女。
苦労の末、彼女は夢を叶えた…のに。
先日、突然病で倒れ、亡くなった。
彼女の力強い歌声が、耳に入ってくる。
きっと、この歌は誰かの心に響き、勇気と元気を与えるだろう。
その一人が……俺だ。
目を瞑り、彼女が生きた証をずっと聴き入っていた。