たーくん。

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7/23/2025, 10:13:45 PM

英語の授業が終わり、騒がしくなる教室。
"True Love"
さっき英語の先生から学んだ英単語。
意味は、真実の愛。
「皆も、高校生活三年間で見つけられるといいですね」
英語の先生がそんなことを言うから、女子達が集まって盛り上がっている。
女子って、どうしてそんなに恋愛話が好きなんだろう?
まぁ、俺には関係ないことだ。
「女の子達を見てなにぼーっとしてるのよ」
話しかけてきたのは、同じクラスで幼馴染みの侑子。
「いや、恋愛話で盛り上がってるなーって思ってさ」
「へぇー……あんた、恋愛に興味あるんだ」
侑子は両手を後ろにして、モジモジしながら言った。
「なにモジモジしてるんだよ侑子。あの日か?」
「そんな訳ないでしょ!このバカ!」
侑子は怒って自分の席へ戻っていった。
「なに怒ってるんだよあいつ」
まっ、いっか。
しばらくすれば機嫌は戻るだろう。
真実の愛……ね。
多分、俺には、いや、俺達にはまだ早い気がする。
……やっぱり、次の授業が終わったら侑子に謝っておくか。
あれこれ考えていると、次の授業の始まりを告げるチャイムが、教室内に響き渡った。

7/22/2025, 10:30:33 PM

大勢の人が行き交う休日の交差点。
横断歩道の信号が、赤から青に変わる。
「もう会うことはないと思うから、バイバイ」
彼女は人混みに交じりながら横断歩道を渡っていく。
俺は彼女の姿が見えなくなるまで、見ていた。
「好きな人が出来たから別れてほしいの」
ある日、彼女から言われた突然の別れ話。
言われた時は頭の中が真っ白になったが、すぐに我に返る。
「……分かった。君がそうしたいなら」
俺は別れることをオッケーした。
普通なら、反対したり、止めたりすると思う。
だけど、俺は彼女には幸せになってほしいから、他の男と付き合って幸せになれるなら、それでいいと思った。
もし、上手くいかなくなったら、「やっぱりあなたじゃないとだめ」と言って、彼女は俺の元へ戻ってくるはずだ。
だからさよならは言わない、またいつか……。

十年後。
結局、彼女は戻ってこなかった。
俺はあれからずっと独り身だ。
やっぱり、俺は彼女のことが一番好きだったから、他の女とは付き合う気になれなかったんだと思う。
大勢の人が行き交う休日の交差点。
彼女と別れた場所であり、彼女を最後に見た場所。
横断歩道の信号が赤から青に変わる。
俺は人混みに交じりながら、横断歩道を渡っていく。
「あれ?」
前から、見覚えのある女性が歩いてくる。
あれは……彼女だ。間違いない。
彼女の左側には背が高い男性、右側には小さい子供と手を繋いでいた。
絵に描いたような、幸せそうな家族。
彼女は俺とすれ違うが、見向きもせず、そのまま歩いていく。
俺は立ち止まり、振り返って、彼女の後ろ姿をぼーっと見ていた。
横断歩道の信号が赤になっても、車にクラクションを鳴らされても、ずっと……見ていた。
"またいつか"は、もうない。

7/21/2025, 10:17:07 PM

夜空に散らばっている星達。
夏の夜空は、星が多く見える。
しばらく見ていると、流れ星が空を駆けた。
目で星を追いかけるが、すぐに消えてしまう。
もう少しゆっくり駆けてくれたらいいのに。
そうすれば、願い事も出来るし、観察することも出来る。
再び流れ星が駆けるのを待つが、なかなか現れない。
暑いし、そろそろ部屋に戻ろうかな……。
と考えていると、流れ星が空を駆けていった。
……また願い事が出来なかったじゃないか。
どうやら、流れ星との追いかけっこはまだまだ続きそうだ。
頬を両手で軽く叩き、気合いを入れて再び流れ星が駆けるのを待った。
結局、このあと流れ星が駆けなかったのは言うまでもない。

7/20/2025, 11:01:01 PM

青くて、どこまでも広がる朝の海。
浜辺に何度も打ち寄せる波を音を聞きながら、海を見ていた。
俺は人生に行き詰まったら、こうして海からパワーを貰っている。
学校でいじめられて、どうしようか悩んだ時。
仕事でうまくいかず、転職するべきか悩んだ時。
彼女に浮気しているのを目撃して、別れるか悩んだ時。
親が急病で亡くなって、心が空っぽになった時。
色んな時に、海を見て癒され、パワーを貰った。
人生は予想出来ない沢山のイベントが起きる。
まさに、波乱万丈だ。
でも、それらを乗り越えてきたから、俺はここに居て、今を生きている。
一瞬、風が強く吹く。
波が大きくなり、浜辺に大きい音を立てながら打ち寄せる。
まるで、俺を元気づけるかのように。
今日も頑張ろう、生きようと、俺は思った。

7/19/2025, 11:16:04 PM

物が散乱している埃っぽい家の倉庫。
少しは整理しよう思い、箱や段ボールを一旦外へ出していく。
途中で、見覚えのある箱を見つけた。
子供の頃によく使っていたおもちゃ箱だ。
開けると、綺麗な状態でおもちゃ達は眠っていた。
おもちゃ達の一番上に、小さい飛行機が置かれている。
昔、駄菓子屋で買って、よく遊んだ発泡スチロールの飛行機。
確か……ソフトグライダーって名前だったっけ。
結構派手なデザインで、実際にこんな飛行機が飛んでいたらすごく目立つだろう。
飛行機を手に取り、倉庫から出る。
今日は雲一つない青空で、絶好の飛行日和だ。
空に向けて、飛行機を飛ばした。
「飛べ!」
飛行機は勢いよく空に向かって飛ぶが、すぐに落ちてしまう。
あれ?昔はもっと飛んだんだが……。
それから何度も何度も飛行機を飛ばし、気がつくと一時間経っていた。
倉庫の整理は……今度でいいか。
昔遊んだおもちゃは、今遊んでも時間を忘れるぐらい楽しかった。

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