たーくん。

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6/14/2025, 11:02:19 PM

多くの人が空を見上げている河川敷の花火会場。
もしも君が退院したら、またここへ来ようと約束していたのに、君は遠くへ……行ってしまった。
ドーン!と大きい音を鳴らしながら、花火が打ち上がる。
夜空に、大きな光の花が咲く。
花火はこんなに綺麗なのに、心から感動出来ない。
やっぱり、君と一緒に見たかったよ……。
俺の気も知らず、次々と打ち上がっていく花火。
俺は、ただぼーっと花火を見ることしか出来なかった。

6/13/2025, 10:48:16 PM

色んな音が混じり合う賑やかな都会。
どんなに周りで音がしていても、君の口から出る感情を乗せた言葉だけは聴き取れる。
だって、それは君だけのメロディだから。
「どうしたの?私のことじーっと見て」
「いや……別に、なんでもないさ」
「えー、気になるー」
今日も彼女は、色んな言葉のメロディを奏でていた。

6/12/2025, 11:20:21 PM

人で埋め尽くされたライブ会場。
全員、私の単独ライブを見に来てくれたファン達だ。
現在全国ツアーの真っ最中で、今日は大阪に来ていた。
数年前の私が、今の私を見たら、きっとすごく驚くだろう。
全国ツアーが出来るほど、私は成長したから。
私はステージの真ん中に立ち、マイクでファン達に呼び掛ける。
「皆ぁーーー!私に好きなもの教えてくれるーーー?」
私の呼び掛けに、ファン達は「いいよーーー!」と答えた。
「じゃあ私がI love?って聞くから、そのあとに続いて好きなもの言ってね!いくよ!I love?」
「たこ焼きーーー!」
「551の肉まんーーー!」
「阪神ーーー!」
「串かつーーー!」
「通天閣ーーー!」
ファン達は、各々好きなものを叫んでいる。
「なんでやねんっ!私の名前を言ってよーーー!」
私がそう言うと、ファン達は笑い、会場が湧く。
これはライブでいつもやるコールアンドレスポンス。
今日は大阪でライブをしているから、ファン達は大阪にある物を言ってくれたみたい。
「皆、大阪バージョンで答えてくれてありがとう!それじゃ次の曲いくよーー!」
私はマイクをぎゅっと握り、ファン達に感謝を込めて歌った。

6/11/2025, 11:23:01 PM

どんよりとした空から大量に落ちてくる雨粒達。
確か今日は傘を持ってきたはずなのに、私の傘がどこにもない。
多分、あの子達がどこかに隠したか、持っていったのだろう。
なぜか私だけをいじめてくる同じクラスのあの子達。
頑張って笑って誤魔化してるけど、そろそろ限界かもしれない。
今日は雨でよかった。
皆が傘をさして帰ってる中を、私は雨に打たれながら歩く。
雨粒達が私の負の感情と涙を洗い流してくれる。
ずぶ濡れで帰ったら、お母さんに怒られるだろうなぁ……。
傘無くしたし、ほんと、いいことがない。
「寺田さん、風邪ひくよ?」
誰かが、私を傘の中に入れてくれた。
横を見ると、同じクラスの田中さんが、心配そうな顔で私を見ている。
「で、でも私……」
こんな所をあの子達に見られたら、田中さんもいじめられるかもしれない。
傘から出ようとしたら、田中さんも一緒についてくる。
「気にしないで。私が勝手にやってることだから。それに、寺田さんのことが気になってたから」
優しい声で私を心配してくれる田中さん。
さっきの涙とは別の涙が出そうだ。
「ありがとう……田中さん」
「うんっ、一緒に帰ろっ」
私は雨音と優しさに包まれながら、田中さんと一緒に帰った。

6/10/2025, 11:13:08 PM

太陽が元気過ぎる快晴の空。
そんな太陽の下で、俺は歴史的瞬間を目の当たりにしようとしている。
突然強風が吹き、前から歩いてきた若い女性のロングスカートが……大きく捲れていく。
スカートは膝を越え、太ももが露になる。
なんて美しい足なんだ……。
スカートの捲れ方といい、もし今スケッチブックと鉛筆を持っていたら、きっと素晴らしい絵が描けただろう。
スカートは太ももを越え、ピンクの──。
「しゃがみながらどこ見てるのよ!このスケベ変態野郎!」
女性は持っていた鞄をバットのように振り、俺の顔面に直撃した。
俺は地面に倒れ、女性はスカートをひらひらと揺らしながら去っていく。
もう少しで、歴史的瞬間を目の当たり出来たのに。
倒れながら空を見ると、太陽が俺を見て、ギラギラと笑っていた。

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