ふわっと風が肌を撫でる。
花びらが舞い、一瞬にして
辺り一面が桜色に染まる。
たくさんの笑い声に包まれて、
暖かい空気に呑まれていく。
目の前のあの人を捕まえたくて。
届きそうなあの人の服の裾を掴みたくて、
パッと手を伸ばした。
不意に冷たい空気が身を包み
枯れた木々が目に映る。
誰もいない虚空に触れた私は我に返った。
春の魔法にかかった私は
あの日の温もりを求めて。
【No.20 #魔法】
君と見た虹は、
なんだかぼやけていて見えづらくて。
でも暖かくて鮮やかで、
目が痛むくらいに美しくて。
きっと独りで見ただけでは
“美しい”
だなんて思えなかった。
あなたがいなきゃこの虹の価値を見出せない。
一緒に見てくれるだけでいい、ただずっと隣であなたのその表情が見れればそれで良かったのに。
【No.19 #君と見た虹】
君は今、何をしていますか。
自分を縛って、苦しくて苦しくてしょうがなくて。
何もかも持っていて贅沢者なくせして不自由な日々をおくっていますか。
完璧なんてないし、誰も完璧なんて求めてないし、期待なんてしてないのに。
要らない不用品にはなりたくなくて、必死に縋って、自分を偽って。
どうにかしたいって強く望んで努力してもどうしても変われなくて。
どうか、いつか私がもっと我儘になれますように。
【No.18 #君は今】
成人前最後の日。
明日から大人とみなされる自分の過去を振り返る。
やんちゃだったあのときも、無口だったあのときも、何でもないようだけど大切で素敵な毎日を送ってきた。明日からもきっと変わらずに日々を過ごすだろう。
今しかないこの瞬間に、今日という日にさよなら。
【No.17 #今日にさよなら】
こんな夢をみた。
水たまりにぽつんと映る私。
今すぐにでも呑み込まれそうな深海のような真っ黒い底があって、そこに呑み込まれたらきっと何もかもどうでもよくなってしまいそうで。
楽になりたいな、なんて思ったけれどそこには踏み込めなくて。
弱い弱い自分はまた目を覚まして
変われない私とまたいつもの日々を過ごす。
【No.16 #こんな夢をみた】