NoName

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10/29/2023, 1:03:42 PM

 お題 もう一つの物語
 
 私には妹がいた。
 流産で死んだらしい。
 その時の記憶を何故か鮮明に覚えている。
 まだ、6、5歳の私の手の人差し指を握りしめてい
 る、小さな手。
 その小さな手は、なんだか紫色をしていた。
 死んでいたのか、その時にはまだ生きていたのか。
 そんな事は分からないが、確かにこの手を握ってい
 た。
 私が初めて、死を知った瞬間だった。
 そして私が初めて、お姉ちゃんになった瞬間だった
 。
 
 妹が私の代わりに生きていたら_______。
 そう、考えない日はない。
 でも、その理由は綺麗なものなんかじゃなく、
 私の身代わりになって欲しい、そんな理由だ。
 中学になってから始まった、同級生からのいじめ。
 辛すぎた。何回死のうと思ったか。
 でもそんな勇気はなかった。
 だから、変わって欲しかった。
 逃げ出したかった、この日常から。
 今日も妹の仏壇の前で今はもういない妹へ、言う。
 「私の体で生きてみて。」