お題 もう一つの物語
私には妹がいた。
流産で死んだらしい。
その時の記憶を何故か鮮明に覚えている。
まだ、6、5歳の私の手の人差し指を握りしめてい
る、小さな手。
その小さな手は、なんだか紫色をしていた。
死んでいたのか、その時にはまだ生きていたのか。
そんな事は分からないが、確かにこの手を握ってい
た。
私が初めて、死を知った瞬間だった。
そして私が初めて、お姉ちゃんになった瞬間だった
。
妹が私の代わりに生きていたら_______。
そう、考えない日はない。
でも、その理由は綺麗なものなんかじゃなく、
私の身代わりになって欲しい、そんな理由だ。
中学になってから始まった、同級生からのいじめ。
辛すぎた。何回死のうと思ったか。
でもそんな勇気はなかった。
だから、変わって欲しかった。
逃げ出したかった、この日常から。
今日も妹の仏壇の前で今はもういない妹へ、言う。
「私の体で生きてみて。」
10/29/2023, 1:03:42 PM