椿灯夏

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8/7/2025, 11:00:48 AM

お題《心の羅針盤》

想いは箱にしまいこんだまま
あの日かたづけた憧れは
永遠に腐敗しない
触れることすら罪な気がした
荒んだ心の目では
映るものは映らない

いつから臆病者
いつから偽善者
いつから傍観者

想いは箱にしまいこんだまま
言い訳がほしかった
自分は被害者
自分は誠実
仕方ない
仕方なかった

あまりにもくだらない
それでも
捨てきれない
許しは
なにも救わないのに


あの日かたづけた憧れは
永遠に美しいまま

8/5/2025, 1:48:43 PM

お題《泡になりたい》


朽ちてゆくだけのうつわだった
イチリンソウの咲く頃に
あなたの夢をみる
いつか、叶うと、信じてた

「君を世界でいちばん幸せにするよ」


朽ちてゆくだけのうつわだった
イチリンソウの咲く頃に
あなたの夢をみる
いつか、叶うと、信じてた


「ここを君とふたりで幸福の咲く国にしよう、誰も悲しまない、争いのない国に」


朽ちてゆくだけのうつわだった
イチリンソウの咲く頃に
あなたの夢をみる
いつか、叶うと、信じてた


花は枯れて大地に散るだけ
誰も知らない歌は
誰にも歌われることはない
誰も知らない物語は
誰にも語られることはない


朽ちてゆくだけの、うつわだった
イチリンソウの枯れる頃に
あなたの幻影を手をひかれる


待ち望んだのは枯れることのない、永遠






7/5/2025, 2:58:10 PM

お題《波音に耳を澄ませて》

寄せてはかえる
寄せてはかえる
追いかけては遠ざかり
繰り返し 繰り返し 鼓膜に刻む
人魚の泡を
人魚の泡を

いつか聴いたあの歌は
人魚の残した形見だろうか
ゆらゆら ゆらゆら 揺蕩い
鼓膜のに響く水の音
魅了という名の呪いの果て
僕らは月の輝く夜の海にかえる


“水底で骨になり。水底で、青い夢をみる”


足を海水に浸せば
僕らは魚になる
僕らは泡になる
ゆらゆら ゆらゆら 彷徨い
僕らは月の輝く夜の海にかえる

僕らは水底から生まれ
僕らは水底に帰る



――眠ろう眠ろう現の想い出とともに

――眠ろう眠ろういつか、ふたたび目覚め、陽を浴びる日まで




《途中書き》

6/24/2025, 3:56:11 PM

お題《空はこんなにも》
 
透く澄んだその瞳
忘れることはできなくて
今も想い出す
夜明けに淹れたハーブティー
吟遊詩人が語る亡国の空

――これは神代に滅んだ古の国の物語
歴史にものこらない小国の歩んだ、悲劇の物語
空は何も語らない
空は遠い果てに死んでしまった
空は何も語らない

《途中書き》

6/12/2025, 9:37:46 AM

お題《雨音に包まれて》


ここは願いの町
ここはまほろの町
ここは“雨に嫌われた町”

語られた運命の町
語られた伝承の町
語られた“雨に呪われた町”


祈り ゆらり ふらり
紡がれる先にあるのは
終焉か 始まりか 再生か


夢にゆらりゆれり落ちて
また雨音が纏わりついて
夢の間に間に儚く溶けて

ここは願いの町
ここはまほろの町
ここは“水鏡の町”




雨音に誘われて

雨音に誘われて

夢幻を彷徨う


終わりのない旅路

《途中書き》





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