お題《心の羅針盤》
想いは箱にしまいこんだまま
あの日かたづけた憧れは
永遠に腐敗しない
触れることすら罪な気がした
荒んだ心の目では
映るものは映らない
いつから臆病者
いつから偽善者
いつから傍観者
想いは箱にしまいこんだまま
言い訳がほしかった
自分は被害者
自分は誠実
仕方ない
仕方なかった
あまりにもくだらない
それでも
捨てきれない
許しは
なにも救わないのに
あの日かたづけた憧れは
永遠に美しいまま
お題《泡になりたい》
朽ちてゆくだけのうつわだった
イチリンソウの咲く頃に
あなたの夢をみる
いつか、叶うと、信じてた
「君を世界でいちばん幸せにするよ」
朽ちてゆくだけのうつわだった
イチリンソウの咲く頃に
あなたの夢をみる
いつか、叶うと、信じてた
「ここを君とふたりで幸福の咲く国にしよう、誰も悲しまない、争いのない国に」
朽ちてゆくだけのうつわだった
イチリンソウの咲く頃に
あなたの夢をみる
いつか、叶うと、信じてた
花は枯れて大地に散るだけ
誰も知らない歌は
誰にも歌われることはない
誰も知らない物語は
誰にも語られることはない
朽ちてゆくだけの、うつわだった
イチリンソウの枯れる頃に
あなたの幻影を手をひかれる
待ち望んだのは枯れることのない、永遠
お題《波音に耳を澄ませて》
寄せてはかえる
寄せてはかえる
追いかけては遠ざかり
繰り返し 繰り返し 鼓膜に刻む
人魚の泡を
人魚の泡を
いつか聴いたあの歌は
人魚の残した形見だろうか
ゆらゆら ゆらゆら 揺蕩い
鼓膜のに響く水の音
魅了という名の呪いの果て
僕らは月の輝く夜の海にかえる
“水底で骨になり。水底で、青い夢をみる”
足を海水に浸せば
僕らは魚になる
僕らは泡になる
ゆらゆら ゆらゆら 彷徨い
僕らは月の輝く夜の海にかえる
僕らは水底から生まれ
僕らは水底に帰る
――眠ろう眠ろう現の想い出とともに
――眠ろう眠ろういつか、ふたたび目覚め、陽を浴びる日まで
《途中書き》
お題《空はこんなにも》
透く澄んだその瞳
忘れることはできなくて
今も想い出す
夜明けに淹れたハーブティー
吟遊詩人が語る亡国の空
――これは神代に滅んだ古の国の物語
歴史にものこらない小国の歩んだ、悲劇の物語
空は何も語らない
空は遠い果てに死んでしまった
空は何も語らない
《途中書き》
お題《雨音に包まれて》
ここは願いの町
ここはまほろの町
ここは“雨に嫌われた町”
語られた運命の町
語られた伝承の町
語られた“雨に呪われた町”
祈り ゆらり ふらり
紡がれる先にあるのは
終焉か 始まりか 再生か
夢にゆらりゆれり落ちて
また雨音が纏わりついて
夢の間に間に儚く溶けて
ここは願いの町
ここはまほろの町
ここは“水鏡の町”
雨音に誘われて
雨音に誘われて
夢幻を彷徨う
終わりのない旅路
《途中書き》