お題《叶わぬ夢》
忘れられた玉座に蔦が這う
色褪せた王のいない城
幻想の人影が揺れ動く
王を探して
もう二度とここには戻らぬ主の帰りを待つ
――いつまで待つのだろうか
王は終焉の地でとうに果てたというのに
死んだら夢も何もない
残るものなどありはしない
屍となって砂塵となるだけだ
――そうか。それが“幸せ”か
オレと“あいつ”のように
心の奥底に鍵をかけた
いい記憶だって
見方を変えれば悪夢でしかない
――王よ。あなたは何を望む?
叶わぬ夢でも――
記憶の中の王に語りかける
「――――」
…………そうか
最初からすべてわかっていた
――あなたは生まれながらの“王”だな
《途中書き》
お題《星》
天幕の向こうに星火が灯る
旅人の行く末を示す羅針盤
いつか邂逅を果たすその時まで
それを道標に狭間を渡る
散りゆく花に誘われて
新たな物語を紡ぎだす
星空の向こう竜の詩を聴いた
お伽話のように懐かしく
伝承のように神々しい
いつかの記憶がよみがえる
異端扱いされた少女と詩季綴りの少年
ふたりは出会うはずのない
世界から泡沫となった、ふたり
《途中書き》
お題《願いがひとつ叶うならば》
「沈黙は願いを叶える美しい象徴。お前はどんな夢を望む?」
真実の魔法使いと語るにはあまりにも綺麗な嘘をつく男
その男の名は“アメシウス”
“沈黙は大罪”
“沈黙は願いを汚す行い”
神を崇めるその街は魔法使いを嫌う
街一番の教会は魔法使いを裁くための籠鳥
そこには地位の高い聖職者と魔法使いを狩る吸血鬼が
永遠とも想える悪夢を再演するのだ
誰も彼もが騙し合う
己の願いのために
嘘と嘘を重ねて“真実”にする
《途中書き》
お題《秘密の場所》
淡い春の泡沫に約束を埋めた
果たされることのない約束を
散りゆく花弁の海で蒼穹を呪う
あまりにも美しく空が笑うから
憎らしくなったんだ
君と交わした約束はこの世界に
もう残っていないようで
《途中書き》
お題《ラララ》
この世界は奇劇で出来ている
たくさんの人が生きる喜劇
それは時にどうしようもなく哀れで
どうしようもなく美しい
《途中書き》